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【助産師執筆】産後2週
出産の後どんなことが起きるの?
産後早期の赤ちゃんとママの体の変化を知ろう

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ご出産おめでとうございます!その瞬間から始まる育児。「うちの子は元気?これって大丈夫?」初めてみる我が子の様子はすべてが新鮮で、心配になることもいっぱいあるかもしれません。「他の子はよく寝ているのに、うちの子はおっぱいを飲んでも泣き止まない…」出産直後はアドレナリンが出て興奮気味に過ごされる方も多いですが、産後2~4日目あたりにどっと疲れが出てしまう方もいらっしゃいます。退院して不安になる前に、新生児期の赤ちゃんの特性を一緒にイメージしてみましょう。
そしてこの産後早期に、唯一頑張ってほしいことが、“ママの身体を休める”ことです。何よりも身体の回復が優先です。産後の心身の変化について知って、家族をはじめ周囲の方と力を合わせて育児をスタートしていただきたいと思います。
今回は、産後早期の赤ちゃんとママについてお話しします。

  • 生まれてすぐの赤ちゃんは一時的に体重が減る
  • よく飲んでよく出すことは黄疸ケアにも重要
  • スクリーニングとはあくまでも早期発見の一次検査
  • なにより産後の身体を休めることは最優先
  • ひとりで頑張らないがお約束

産後早期の赤ちゃんは?

新生児の生理的な発達を知ろう


新生児の五感って?※1,2
●視覚
視力は0.02~0.05程度で、授乳などで赤ちゃんを抱いた時に目線を合わせる25cm程度の距離ははっきり見えています。
●聴覚
生後24時間でも音に反応し、生後3日頃にはママの声を聞き分けることができると言われています。
●味覚
甘い物と甘くない物との識別ができ、食事などの影響による、わずかな母乳の味の変化に気がつくと言われています。
●嗅覚
出生直後に初めて母子の肌と肌が直接触れ合う早期母子接触の様子※3から、母乳の匂いが分かると言われています。
●触覚
手を握る、おなかに手をあてることによって、安心感を与えなだめることができます。
興味深い新生児の原始反射※4,5

大脳の発達は未熟なため、特有な反射(意図しない動き)がみられます。出生直後からみられ、生後半年前後でなくなります。

●モロー反射
音などの刺激で起こる反射
●非対称性緊張性頚反射
首の向きにより手足の姿勢を変える反射
●把握反射
ものが触れると握り締めようとする反射
●哺乳反射(探索反射・捕捉反射・吸啜反射)
練習することなくお母さんの乳首を自分で吸える反射
具体的な動きはYoutubeなどで ご覧になれますので興味のある方は調べてみてくださいね。
知っておくと安心、生理的な変化
●体重減少※6
生まれたばかりは哺乳量よりも排泄量が多いため、一時的に体重減少が起こり、生後1~2週間で出生時体重に戻ります。その後は体重増加も軌道に乗りますが個人差があります。
●嘔吐※7
胃の形が成人に比べ縦型で、げっぷをして空気を出しやすい構造になっているため、吐きやすいです。

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●排泄※5,6,8
排便
出生後の胎便は黒緑色でねばりけがあり、まだ細菌も存在しません。授乳が始まると徐々に腸内細菌叢が定着し、粒々が混じる黄色い便に変化します。
排尿
膀胱に尿が溜まるとすぐ排尿するので、1日10~20回程度みられます。尿にピンク色の粒々がまざることがありますが、これは尿酸塩という結晶が溶け切れずに出てきたもので、病気ではありません。
●新生児月経・新生児帯下
胎児期における母親の女性ホルモンの影響で、女児の性器から少量の出血や透明から乳白色のおりものが出ることがあります。
●生理的黄疸※6,9
生後3~4日くらいから皮膚や白目の色が黄色っぽくなります。まだ肝臓の働きが未熟なため、黄色味の原因となるビリルビンの増加で、皮膚・粘膜などが黄染して見える状態です。生後5~7日でピークに達し、生後2週間以内になくなります。

黄疸時のケア

便が腸内に停滞していると、便中のビリルビンの影響で、黄疸の悪化につながります。哺乳量が確保されると排泄量も増加し、黄疸はおさまってきます。強弱に程度はありますが、黄疸が強い場合には光を浴びる治療が必要になることもあります。

初めての検査は心配?新生児のスクリーニング※10

新生児期に行われるスクリーニングは、異常の早期発見を目的としています。

●聴覚スクリーニング 
簡易検査であり、痛みはなく安全で寝ている間に10分程で終了します。

実施の時期
産科医療機関では入院中に行われることが多いです。体動によるノイズを避けるため、授乳後1時間くらいまでのタイミングが適しています。出生直後は結果が悪く出た際には、入院期間中や健診の際に再検査を行うこともあります。

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●新生児マス・スクリーニング(先天性代謝異常症等検査)※11,12
ホルモンに異常のある病気と、栄養素を利用する過程に何らかの問題がある病気を20種類程度、検査できます。

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検査方法
生後5日前後の数滴の採血から病気の可能性がないかを調べます。結果は、通常1か月健診で説明されるようになっており、もし再検査が必要な場合は個別に連絡があります。


産後早期のお母さんは?


産後の身体の変化※13,14

産後の身体が妊娠前の状態に回復するには6~8週間かかります。

●子宮の変化
産後4~6週間で子宮は妊娠前の鶏卵大(7cm程度)に戻ります。子宮の収縮に伴い、後陣痛という周期的な下腹部痛を感じます。この強さは個人差が大きく、子宮収縮を促すオキシトシンが分泌される授乳中に強くなることがあります。
●悪露
子宮内の胎盤が剥がれた面からの出血を悪露といいます。悪露が出ている間は傷が治っていない証拠で、感染予防のために外陰部の清潔を保つことが必要です。退院後、運動量が増えると悪露の量が増加し赤みが強くなることがあります。一時的なものですが、しっかり身体を休めるように心がけてください。

受診してほしい症状

  • 日常生活に支障をきたす強い後陣痛がある
  • 悪露の量が月経量より多く悪臭を伴う
  • 38.5℃以上の発熱が続く
  • 排尿困難感や排尿時痛、残尿感などがある
●貧血
産後に鉄剤を飲むことがあります。授乳によっても鉄が失われるため、鉄分の多い食事を摂ることが必要です。ビタミンCや動物性のたんぱく質と一緒に摂取すると吸収率がよくなります。
●便秘
産後は便秘傾向になるので食物繊維と水分を意識的に摂取しましょう。便意があったら我慢せずにトイレにいってくださいね。痛みが怖い、便が硬く出しづらい時には医師に下剤処方を相談します。
産後の心の変化※13~16 
●マタニティブルーズ
はっきりとした理由もなく泣いたり、イライラしたり、軽いうつになることがあります。数日で症状はなくなり特別な治療を必要としない状態です。ホルモンの変動や育児不安、周囲の環境に関連していると言われています。誰にでも起こり得る一過性の状態で、不安定な感情を表に出すことも重要です。周囲のサポートに頼って、しっかり身体を休めてください。
●産後うつ病
出産後数週から数か月以内に発症するうつ病で、10~15%と高い発症率です。抑うつ感の他、母親役割に自信を喪失、赤ちゃんの健康状態への過度な不安や焦燥感として現れることもあります。頭痛、息苦しさ、だるさなどの症状が出ることもありますが、本人は気がつけないことが多いです。産後の心身の変化について周囲に知っていてもらうこと、育児を一人で頑張りすぎないことは大切です。

いかがでしたか?赤ちゃんもお母さんの体も急激に変化するときだからこそ、無理せず不安なことや分からないことは、かかりつけ病院にもご相談ください。

また、気になることはXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問していただくのも大歓迎です。
みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

参考文献

※1 仁志田博司,新生児学入門,医学書院,東京,2013,34-35

※2 横尾京子編,助産学講座8 助産診断・技術学Ⅱ 新生児・乳幼児期,医学書院,東京,2014,24

※3 「早期母子接触」実施の留意点,一般社団法人 日本周産期・新生児医学会,2007,2022/02/22,
http://www.jspnm.com/sbsv13_8.pdf

※4 医療情報科学研究所編,病気がみえるvol.10 産科 第3版,メディックメディア,東京,2013,412

※5 池ノ上克他編,NEWエッセンシャル 産科学・婦人科学 第3版,医歯薬出版,東京,2014,384

※6 森恵美他,系統看護学講座 専門分野Ⅱ 母性看護学2,医学書院,東京,2011,232-233,236-237,255-258

※7 和田紀之,知っておきたい小児診療の実際,日本医師会総合政策研究機構,2005,2022/02/22閲覧,
https://www.jmari.med.or.jp/wp-content/uploads/2021/10/syouni.pdf

※8 社会福祉法人恩賜財団母子愛育会 日本子ども家庭総合研究所,パパ・ママのための育児Q&A1500,保健同人社,東京,215

※9 「周産期医学」編集委員会編,周産期医学vol.40増刊号,東京医学社,東京,2010,543

※10 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会,新生児聴覚スクリーニングマニュアル ―産科・小児科・耳鼻咽喉科医師、助産師・看護師の皆様へ―,松香堂,京都,2016,2022/02/22閲覧,
http://www.jibika.or.jp/members/publish/hearing_screening.pdf

※11 一般社団法人 日本マススクリーニング学会,2022/02/22閲覧,
https://www.jsms.gr.jp/

※12 NPO法人タンデムマス・スクリーニング普及協会,2014,2022/02/22閲覧,
https://tandem-ms.or.jp/

※13 堀内成子,助産師・看護師必携 産褥・退院支援ガイドブック,メディカ出版,大阪,2003,10-13,14-16,26-31

※14 坂本正一他,プリンシプル産科婦人科学2,メジカルビュー社,東京,1998,158-160

※15 我部山キヨ子,臨床助産師必携 生命と文化をふまえた支援,医学書院,東京,2006,353-355

※16 我部山キヨ子他,助産学講座7 助産診断・技術学Ⅱ [2]分娩期・産褥期,医学書院,東京,2014,317-323,336-339


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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