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【助産師監修】産後5週(産後1ヵ月)
これって産後クライシス!?
今こそ家族のコミュニケーションを見直そう

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1ヵ月健診はもう終わりましたか?産まれた時からの成長を感じた方も多かったのではないでしょうか。
そして里帰りをされている方は、そろそろ自宅へ帰る時期も考え始めているかもしれませんね。
さて、赤ちゃんとの関わりに集中しがちなこの時期ですが、夫婦関係はいかがでしょうか。今日は「産後クライシス」についてお伝えしたいと思います。

  • 産後クライシスとは産後の夫婦関係の悪化
  • 産後のママは心身共に不安定
  • 育児力の差を埋める努力がとても大切
  • 言葉にして気持ちを伝えよう!

産後クライシスってなに?

産後クライシスとは、出産をきっかけに夫婦の愛情が薄れてしまい、夫婦関係が急激に悪くなってしまう現象のことです。
その愛情は回復することがないと言われています。2012年にNHKの情報番組で「産後クライシス」という名前で提唱されました※1
出産前は仲の良かった夫婦も、産後クライシスに陥ると、離婚にまで至るケースも意外と少なくありません。
産後の夫婦関係がどうなって行くかは、出産直後の二人の関わり方がとても大切です。


夫婦の愛情は産後どう変化する?

夫婦関係について約300組を対象とした調査があります。
この調査によると、「配偶者といると本当に愛していると実感する」と答えた妻は、妊娠期に74.3%だったのに対し、0歳児期には45.5%と急低下し、1歳児期36.8%、2歳児期34.0%と3人に1人しか、愛情を感じていません。
夫は、2歳児期でも「愛していると実感する」人は51.7%と半数でした。
妊娠中はどちらも同じ約70%であるのに、こんなに産後には変化してしまうものなのです※2。どうしてこのような差が出来てしまうのでしょうか。

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ママの産後の気持ち

1人目の時は初めての育児で戸惑うことが多いですし、2人目でも「2人を育てること」は初めての経験で、上の子の対応をしながら赤ちゃんに関わることに難しさを感じるママも多いと思います。
そして育児は24時間休みなく、睡眠不足が続く日々。
精神的余裕が無くなるのも無理がありません。その上、社会からの孤立感を感じるママもいるでしょう。
このようにママの生活ががらりと変わってしまうのに対し、パパは子どもが産まれる前と変わらない生活をしていたらどうでしょう。
産後のしんどさに寄り添えなかったり、赤ちゃんが泣いているのにあやすこともせず「泣いているよ」とスマートフォンを片手にママに言ったり、一人で先に寝室へ行きぐっすりと眠ってしまったり。
パパの育児への主体性の少なさが、ママの愛情をどんどんと薄れさせてしまうと言われています。
最近は子育てを平等に行う夫婦も増えてきたものの、一部ご夫婦からはこんな声を聞くのも事実です。


産後はママの体が変わってしまう!?ホルモンの変化についても知っておこう

赤ちゃんの誕生後に、育休を取るパパも増えましたが、引き続きお仕事で忙しいパパもいるかと思います。
以前は二人で家事分担できていたことも、産後は「赤ちゃんのお世話」が優先されてしまうのでそうは行きません。それに伴い、ママもイライラすることが多くなっているかもしれません。
実は出産を終えると、ママのホルモンバランスが全くといっていいほど変わってしまいます。精神的にも不安定になるだけではなく、赤ちゃんを守ろうと神経質になってしまうママもいるでしょう。些細なことにイライラする自分自身に腹が立つママもたくさんいます。
「産後は、気持ちが不安定になりやすいからそっとしておいて欲しい」と事前にパパや家族に伝えておくと良いかもしれませんね。

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里帰り前後の関わりがポイント!

里帰り中こそマメな連絡を!

産後は里帰りをされる方も多いかと思います。
大変な時期はサポートの手が多いに越したことはありません。しかし、里帰りをしているとパパとのコミュニケーションが取り辛くなることが難点です。
また、パパが里帰り先に来た時にも、二人っきりではないのでお話ししにくい場合もあるかもしれません。
しかしそこでコミュニケーションを取ることを諦めてしまうと、ママとパパの育児のスタートラインに大きな差が出てしまいます。
赤ちゃんのことや、自分の体調のこと、こまめに連絡を取り合い、二人で赤ちゃんに向き合っていけるようにしましょう。
パパが来てくれたときには、おむつ交換や沐浴を一緒にしてもいいですね。

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「自分がやった方が手っ取り早い」は絶対NG!

ママは赤ちゃんと一緒に過ごす時間が長いので、育児手技も一足先に取得していることも多いです。
しかし、ママも何もわからないところから頑張ってできるようになったことばかりです。
今度はママがパパに教えてあげる番です。病院スタッフが丁寧に教えてくれたことを思い出して、一緒に上達を目指しましょう。
ここで、ママが「自分でやった方が手っ取り早いな」と率先して行ってしまうと、二人の溝はどんどん開いていきます。
パパも少し寂しい気持ちになるかもしれませんし、今後もママしかできないことが増えていくかもしれません。
これをゲート理論といい、”夫の育児実践は、妻がゲートキーパーとなり、夫をうまく育児にひきいれる(ゲートを開ける)か、追い出すか(ゲートを閉める)による”ともいわれています。実は沐浴はパパの方が得意だった!ということもあります。「パパが」、「ママが」と片方が努力するのではなく、得意な方が苦手な方を迎え入れる気持ちを持ちましょう。


産後に大切なコミュニケーションの取り方

察してもらうことは難しい!言葉にして具体的に伝えよう!

育児が忙しくなると、「どうして分かってくれないんだろう」とお互いが思うこともあるでしょう。
でも、人の気持ちは言葉にして伝えないと伝わりません。
小さなわだかまりが大きくなり、産後クライシスという事態になってしまうのです。ママは出来ることや出来ない事、自分の体調についても言葉で伝えると良いでしょう。
「昨日は一睡もできなかったから、1時間だけでも休ませてほしい」「日中のぐずりが酷くて夜ごはんが用意できないから、何かお惣菜を買ってきて」など、パパに依頼できることは具体的に伝えましょう。
精神面でも伝えたいことは伝えるべきです。
「自分の気持ちがコントロールできなくて自分にも腹がたつ」「上手く育児ができなくて落ち込んでいる」など、言葉にしたほうがパパもどのように関わるべきか分かりやすいはずです。
「言わなくても分かって欲しい」という希望をかなえることは、実はとても難しいことなのです。
相手のSOSを互いに是非受け止めて欲しいです。「育休中なんだから家事育児を全部こなして当たり前」というのは、もってのほかです。


感謝とねぎらいの言葉を大切に

みなさんは、日頃からパートナーに感謝やねぎらいの言葉をかけていますか?大変な育児期だからこそ、意識して言葉にして伝えて欲しいです。「今日は赤ちゃんが一日泣いていて疲れた」「俺だって、仕事で疲れた」と、どちらが疲れたのかを言い合っていても、二人にとってメリットはありません。
二人が疲労困憊のなか、どうやって力を合わせて乗り越えていくかを話さないといけません。
まずは、お互いに「今日も一日お疲れ様」とそれぞれの頑張りをねぎらいましょう。そして、一日中外に出て働いていること、一日中家で赤ちゃんと向き合って育児をしていることに感謝の気持ちを伝えましょう。

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いかがでしたでしょうか?もし産後クライシスの危険があるなと感じたご夫婦は、ぜひ今回のコラムを読んで、取り返しがつかなくなる前に、コミュニケーションを見直して欲しいと思います。

また、気になることはXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

参考文献

※1 "産後クライシス"ひょっとしてあなたも?!, NHK生活情報ブログ, NHK, 2022/4/22閲覧,
https://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/200/130947.html

※2 第1回妊娠出産子育て基本調査・フォローアップ調査 妊娠期~2歳児期
愛情の低下するグラフ, ベネッセ次世代育成研究所, 2022/4/22閲覧,
https://berd.benesse.jp/up_images/research/research20_report1.pdf


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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