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【助産師執筆】産後23週(産後5ヵ月)
周りの子と違う?成長・発達の実際!

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健診で赤ちゃんの身長・体重を測るときや、発達状況のチェックリストに回答をするときに一喜一憂するママ・パパも多くおられるかもしれません。そんな時、母子手帳の基準ってどうやって決めたの?と思ったことはありませんか?
このコラムでは、個人差が大きい赤ちゃんの成長・発達の確認の仕方について、今まで十人十色の発達過程に寄り添ってきた助産師がお伝えします。

  • 成長曲線は「どこにいるか」より「どんな経過か」が大事
  • 予定日より早く生まれたかどうかに関わらず、その子自身の成長を見守って
  • 予定日より早く生まれた子ども用のツールを活用しよう

母子手帳ってどんなことが書いてあるの?

市役所や区役所で「妊娠届」を提出すると渡される「母子健康手帳(通称:母子手帳)」。
そこには妊娠期から乳幼児期、小学校入学までの情報がたくさん書けるようになっています。昭和17年(1942年)から始まった母子手帳(当時:妊産婦手帳※1)には、全国どこでも共通している内容と、市区町村それぞれが任意で書かれている内容の2つがあり、【妊娠中〜小学校入学前】をそれぞれ3つに分けた構成になっています。

【妊娠前・妊娠中】

  • ママの普段の仕事やカラダのこと
  • 家族構成のこと
  • 妊婦健診や妊娠期間中のこと

【出産・出産直後】

  • 出産の状態(赤ちゃんの身長・体重など)
  • 産後のママの状態

【乳幼児〜小学校入学前】

  • 定期健診のこと
  • 予防接種の記録
  • 成長曲線
ここでいつもママ・パパを悩ませるのが
  • 定期健診のこと
  • 成長曲線
の2つです。

定期健診の欄には、先生が記入する所と、健診前にママ・パパが記入する所があります。

  • 首がすわったのはいつ頃ですか?
  • 寝返りをしたのはいつ頃ですか?
  • ハイハイをしたのはいつですか?
など、身体の大きさの発達(身体的発達)、運動能力の発達、手や指の動きの発達、言葉や社会性の発達の、月齢にあわせた「目安」が書かれています。

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母子手帳の「目安」ってどう作られている?

日本では、およそ10 年に1度、1万⼈前後の乳幼児の⾝体計測(⾝⻑・体重)を⾏い、そのデータから成長曲線が作成されています。成長曲線には、平均値ではなくパーセンタイル値が使用されています。※2
パーセンタイルとはデータを⼩さい⽅から順に並べ、全体を100 として⼩さいほうからの何番⽬に位置するかを表すものです。例えば、3パーセンタイルの線は100人中前から3番目、50パーセンタイルは前から50番目に当たる子どもの身長や体重の増え方を示しています。
母子手帳では、3パーセンタイル値~97パーセンタイル値にあたる数値を“目安”として考えています。


「目安」ではなく目の前の子どもの成長を見守ってほしい

しかし、3パーセンタイル値〜97パーセンタイル値の範囲からはずれたからといって問題があるという訳ではなく、身長、あるいは体重の成長曲線が、基準線の曲線に沿っていれば、適正です。※3
大きい子、小さい子それぞれにあった成長速度があるように、100人のうち、「どこにいるか」ではなく、「今どこにいて、次の身体測定ではどこにいるか」が1番大切です。

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首がすわる、寝返りをするといった運動能力の発達についても、身長や体重と同じで、「そのときどうか」ではなく「どう変化していくか」が大切です。
運動発達については遺伝や、環境によって個人差が大きいです。発達は訓練をしないと進まない、というものではなく、日常生活の中で触れたり、声かけをする、おでかけする、外の空気に触れるなどの刺激ひとつひとつが徐々に発達を促してくれます。
発達は個人差がとても大きいので、ゆっくりと我が子の成長を見守ってあげてください。
逆に、つかまり立ちの目安は生後6−12ヵ月なのに、「生後5ヵ月でつかまり立ちを始めた」など、発達が早すぎるということを不安に思う方もいるかもしれません。ですが、発達が早すぎるからといって、つかまり立ちを無理にやめさせてハイハイをさせる必要はありません。赤ちゃんの発達に合わせて遊びや家の環境を工夫しながら、個人差の範囲として受け止めてあげてくださいね。


予定日よりはやく生まれた赤ちゃんのママ・パパに伝えたいこと

予定日より早く産まれ、ママのおなかの中にいた期間が37週未満の赤ちゃんのことを早産児といい、日本では約20人に1人の割合で生まれています。※4
思いがけない出産となり、子どもの成長や発達について不安を抱えているママ・パパもいらっしゃるかもしれません。
どんな子どもにも個性があるように、早産の赤ちゃんにも個性があり、はじめは周りと比べて小さく見えるかもしれませんが、それぞれのスピードで成長します。その子なりの成長・発達の確認ができるように、修正月齢といって、実際に生まれた日ではなく、出産予定日から何ヵ月経過したかで様子をみていきましょう。

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とくに発達に関しては、早産の程度や出生体重によって追いつくスピードは個人差が大きいです。「今どこにいるか」ではなく「前と比べて何ができるようになったか」に目を向けて、医師や保健師とともに見守っていきましょう。


少しだけ早く生まれた赤ちゃんの成長も見守ろう

ママのお腹にいた期間が34週〜37週未満で生まれた赤ちゃんのことを特に後期早産児といいます。生まれた時の体重が2000g〜2500g以上あると、後期早産児であっても医療機関や市区町村において特別な経過の観察がされない傾向があります。※5
しかし、哺乳不良や呼吸障害などがあることもあり、予定日に近い早産であっても決して成熟しているわけではないことは覚えておく必要があります。発育や発達に関して不安な場合は、かかりつけの小児科や乳幼児健診で相談してくださいね。


リトルベビーハンドブックを活用しよう

小さく生まれた赤ちゃんとママ・パパのための母子手帳サブブックとして、「リトルベビーハンドブック」というものがあります。※6
一般に配布される母子手帳の発育曲線では、体重は1㎏から、身長は40cmからです。小さく生まれた赤ちゃんの場合、体重や身長を書く目盛りがないこともあります。
リトルベビーハンドブックでは体重の目盛りのスタートは0からなので、子どもの成長に合わせた記載が可能です。現在11県6市で必要に応じて配布されており、各自治体のホームページで閲覧・ダウンロードも可能です。このようなツールを活用するのもよいですね。

成長がゆっくりだと感じたり、我が子より後に生まれた赤ちゃんの発達が早いように思ったり、気がかりや悩みごとはつきませんよね。そういったときは、ひとりで悩んだり自己判断したりせず、かかりつけ医や助産師・看護師などに、継続的に相談してみてくださいね。

また、気になることはXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

参考文献

※1 横山徹爾, 母子健康手帳の交付・活用の手引き「乳幼児身体発育調査の統計学的解析とその手法及び利活用に関する研究」,平成24年3月作成, 2022/12/1 閲覧,
https://www.niph.go.jp/soshiki/07shougai/hatsuiku/index.files/koufu.pdf

※2 横⼭徹爾、村⼭伸⼦ら,乳幼児身体発育曲線の活用・実践ガイド,令和2年度厚生労働行政推進調査事業費補助金成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業(健やか次世代育成総合研究事業),2022/12/7閲覧,
https://www.niph.go.jp/soshiki/07shougai/hatsuiku/index.files/jissen_2021_03.pdf

※3 村田光範,なぜ、なに、どうして?学校保険第1回「成長曲線」,公益財団法人日本学校保健会,2022/12/7閲覧,
https://www.gakkohoken.jp/special/archives/199

※4 厚生労働省,令和3年度人口動態統計特殊報告,2022/12/7 閲覧,
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/syussyo07/index.html

※5 みずほ情報総研株式会社,低出生体重児保健指導マニュアル,平成31年小さく産まれた赤ちゃんへの保健指導のあり方に関する調査研究会,2022/12/7閲覧,
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000592914.pdf

※6 坂東あけみ, 小さく生まれたこどもを育てるということ, リトルベビーハンドブック, 特定非営利活動法人HANDS, 2022/12/1 閲覧,
https://www.hands.or.jp/activity/littlebabyhandbook/


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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