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【助産師執筆】産後39週(産後9ヵ月)
産後のセックスレス、どう向き合ったら良い?

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妊娠・出産を終えて、休む暇もなく育児が開始。目まぐるしく日々が過ぎていることかと思います。
そうなると、夫婦で話す機会も減り、なかなか2人のセックスライフについて考える時間がないかもしれません。
実際に、妊娠・出産を機にセックスレスに移行する夫婦は多いです。
家族が増えて幸せだけど、夫婦間のコミュニケーションが減り、ママとパパがお互いに悩んでいるケースも少なくありません。
今回は、そんなセックスレスへの向き合い方についてお伝えします。

  • 日本の夫婦は半数以上がセックスレス!?
  • セックスレスの要因はママ・パパともにあり複雑
  • セックス以外のコミュニケーションも大切にしよう。

日本のセックスレス事情

セックスレスの悩みはセンシティブかつ家庭内のことなので、夫婦だけで悩まれている方も少なくありません。
厚生労働省の全国家庭動向調査によると、20代〜40代の半数近くがセックスのない夫婦であるとされています※1。そして妊娠・出産がきっかけとなっていることも多いです。
そもそも、セックスレスの定義は日本性科学会によると、「特別な事情がないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1ヶ月以上なく、その後も長期にわたることが予想される場合」をさします。
ちなみに、セクシュアル・コンタクトとはキス、ペッティング、裸でのベッドインなども含まれます※2
つまり、1ヵ月以上パートナーと性愛的なスキンシップがないことを、セックスレスと捉えます。


産後はいつからセックスを再開してもいいの?

では、産後はいつからセックスをしてもよいのでしょうか?
出産直後から産後6〜8週間を産褥期と呼びます。
この期間は見た目はいつも通りのように見えても、性器内には細かい傷がたくさんあり負担が大きくなりやすいです。
とくに出産時には、外陰部〜肛門にかけての会陰(えいん)と呼ばれる部分を切開したり、裂傷が生じたりすることがあります。
この傷が完全に治らないうちにセックスをしてしまうと、傷跡に血がにじんだり、痛みを感じる場合があります。
他にも、清潔が保てていないとセックスをきっかけに傷口が化膿するリスクもあります。
出産した病院からもセックスは1ヵ月健診を過ぎてからと説明を受けたと思います。
基本的には産後の1ヵ月健診で医師の健診を受け、問題を指摘されなければ大丈夫です。
日本では産後3ヵ月頃から再開する夫婦が多いようです。
また残念なことに妊娠・出産からずっとセックスレスの夫婦もいます。
産後のセックスレスを招く要因は男女によっても違います。
それぞれの原因について確認していきましょう。


女性(ママ)の変化

●ホルモンバランスの変化

新しい命を育む妊娠期は、卵巣で作られるエストロゲンとプロゲステロンなどといった女性ホルモンの量が大きく変動します。
産後はこれらのホルモンの分泌は急激に減少し、授乳のためにプロラクチンやオキシトシンの分泌が増加します。
こうしたホルモンの大きな変動が、性欲の低下、疲労感の蓄積、不眠、イライラ、気分の落ち込みなどといった症状を招きます。

●性欲が湧かない

産後は、女性ホルモンの分泌が急激に減少し、慣れない育児で疲れやストレスがたまり、ママ自身に余裕がなく性欲が湧かない、性欲が減退したという方が少なくありません。
何より「妻」から「子どもの母親」へと役割がシフトするように思えるため、性欲が全く湧かない方もいらっしゃいます。
そうした状況で気分が乗らないままセックスを再開すると、性愛的なスキンシップ自体に嫌悪感が芽生えてしまうこともあるので注意が必要です。

●セックスが怖い

産後は上記でもお伝えしたように会陰部の傷や、帝王切開の傷がある方もいます。
セックスは夫婦のコミュニケーションの場なのに、「痛いのではないか」という恐怖心が芽生える方もいるようです。
また、エストロゲンは、皮膚や粘膜のうるおい、弾力を保つ効果があり、産後エストロゲンが減少することで腟内の分泌物も減少します。
そのため、性交時に痛みを感じたり、性交の刺激で出血しやすくなることが悩みとなっているケースもあります。
一度はセックスに応じるものの「痛み」や「出血」が気になり、だんだんとセックスから遠ざかってしまうこともあります。

●見た目の変化
  • 産後、おなか周りやお尻まわりについたお肉がなかなか取れない
  • 体重が元に戻らない
  • 授乳をしていると乳汁が出るかもしれなくて不安だ
  • 乳房を触られたくない
  • 膣が緩んだ感じがする
  • 体臭が気になるようになった
など、見た目に自信が持てなくなりセックスレスになった方もいらっしゃいます。 膣の緩みが気になる方は、「骨盤底筋トレーニング」をされても良いかもしれません。
トイレでの排尿時に途中で尿を止めてみたり、座っているときにオナラを止めるように肛門をギュッと閉めてみたり気づいた時におこなってみましょう。

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男性(パパ)の変化

●家族として大切な存在になった

結婚前は男女の魅力があったものの、妊娠・出産を機に家族として大切な存在となり性欲が湧かなくなったというパパもいます。
立ち会い出産をして、「女性は神秘的な存在だと感じて、大切にする存在だと思った。自分の性の対象にならなくなった」という方もいます。

●産後の妻にどう接したら良いのか分からない

妻のボディイメージの変化と、育児に追われて疲れていたりイライラしている姿をみて、どう接したら良いのかが分からない。
タイミングが掴めない。
一度断られたことがトラウマとなっていることもあります。

●疲れる・性欲が湧かなくなった

男性の育児参加も増えてきたことにより、我が子の世話と仕事に疲れ、性欲が湧かない。
夜は赤ちゃんが泣くので寝不足である。
生活の中心が赤ちゃんとなりセックスに目が向かなくなった。性欲自体が減退したという方もいます。
住宅が狭く、子どもがいる中でセックスがしづらいなど、男女共にセックスレスの理由はさまざまな要因が複雑に絡み合っています。
また理由がなく「なんとなく」セックスレスになったという方もいるようです。
どちらか片方が悩んでいるのではなく、実は2人とも悩んでいたなんてこともあります。
では、これからどう向き合ったら良いのでしょうか?

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産後セックスレスの改善点

産後のセックスレスは、お互いに性に関するデリケートな問題を抱えて起きている場合があるようです。
その問題を夫婦間で共有できていない、理解していない状況にあることが誤解を招き更なる溝を広げる要因にもなります。※3
セックスもコミュニケーションの一つです。言いにくいかもしれませんが、自分の気持ちを相手に伝えることが大切です。
その時に誤解を招かないようにしたいのは、「セックスをしたくない=相手を否定する」と思わせないことです。
なぜ嫌なのか相手を責めたり傷つける言い方にならないように、自分の気持ちを伝えられると良いですね。
また、セックスは挿入が全てではありません。
それまでのスキンシップを大切にハグやキス、お互いのぬくもりが感じられるような雰囲気作りも大切となります。
その他にも、夫婦2人の時間を作ることや、寝室が別の場合は一緒に寝る頻度を増やす、下着を新調したり、産後いつもスッピンならメイクをしてみる、パパも身なりに気をつけてみるなど自分磨きを取り入れるのも良いですね。
また、挿入時の痛みに関しては、潤滑剤を活用するのもおすすめです。
最近では、潤滑剤のついた指用のコンドームなどもあり、この時期のデリケートな膣内に配慮したセックスが可能です。

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産後のセックスレスを前向きに受け止めよう

妊娠・出産を経て、新たな家族ステージに突入したかと思います。
ママとパパもセックスレスに関して悩むこともありますが、このお陰でパートナーシップの見直しや相手の理解を深めるきっかけ作りになるかもしれません。
セックス以外のコミュニケーションも大切にしてお互いの思いを尊重し焦らず向き合っていけると良いですね。
もちろん、次のお子さまの予定がない場合には、避妊にも気をつけてくださいね!

その他にも、気になることはXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

参考文献

※1 第6回全国家庭動向調査報告書,国立社会保障・人口問題研究所,2020,
https://www.ipss.go.jp/ps-katei/j/NSFJ6/Mhoukoku/Mhoukoku.pdf

※2 セックスレス,Wikipedia,2022/9/8閲覧,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%AC%E3%82%B9

※3 今村久美子、 藤村 博恵、 大森 智美、 茅島 江子,わが国の妊娠・分娩・産褥期におけるセックス・性機能に関する文献検討,埼玉医科大学看護学科紀要,2016


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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