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【助産師執筆】産後42週(10ヵ月)
そろそろ卒乳?正しい知識と準備を知ろう!

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生後半年を過ぎると離乳食が始まり、いつ卒乳をしようか考える方も増えるでしょう。
厚生労働省の調査では生後13ヵ月〜15ヵ月をピークに離乳を完了する赤ちゃんが増えるデータが出ています。ですが子育ては人それぞれ、周りが卒乳しているからではなく、自分らしい選択ができたら良いですね。
今回はそんな卒乳についてお伝えしていきます。

  • 断乳はママ主体、卒乳は赤ちゃん主体で授乳を辞めること
  • 卒乳のタイミングはママと赤ちゃん次第
  • 卒乳には準備が必要
  • 卒乳を見送る勇気も必要
  • まとめ

卒乳?断乳?それぞれの言葉の違いを知ろう!

離乳、つまり授乳をしなくても食事から十分な栄養を摂れるようになってくると、授乳の終了時期についても考えるようになってくるのではないでしょうか。
授乳の終了について考えると「これって卒乳?それとも断乳?」と、言葉の意味が気になる方もいるかもしれませんが、実は卒乳・断乳は正式な医療用語ではありません。※1
以前はママが母乳を完全にやめるという意味の「断乳」という言葉が母子手帳に記載されていましたが、2002年からその記載はなくなりました。※2
現在、「断乳」という言葉はママの方から母乳を「断つ」という意味が一般的かと思います。

一方で、「授乳・離乳の支援ガイド 実践の手引き(厚生労働省)」では、「卒乳とは、赤ちゃん主体で行い、自然に母乳をほしがらなくなるまで授乳を続けること」としています。つまり、ママ主体で授乳をやめることを断乳、赤ちゃん主体で授乳をやめることを卒乳というんですね。

専門家の中には、ママに対して特定の理由や時期に「断乳」をすすめる人もいれば、子どもが自分で離れるまで母乳を飲ませることが「理想の乳離れ」であるかのようにすすめる人もいるかもしれません。しかしいつまで授乳を続けるのかは、ママの考えを十分に尊重してもらえたらと思います。

ここでは、子どもから自然に飲まなくなる方法だけでなく、ママの働きかけでやめていくことも含めて、授乳から卒業することを「卒乳」と定義し、お伝えします。


卒乳の種類

卒乳にもたくさんのレパートリーがあり、いくつかに分類ができます。

●部分的卒乳

「仕事の時間だけ授乳をやめる」「夜間は授乳をやめる」など、時間や回数を決めて授乳する方法です。赤ちゃんの月齢にもよりますが授乳回数が減る分、離乳食や水分摂取に気を配る必要があります。

●計画的卒乳

ママの治療など医学的な理由や諸事情で、ある時期までに授乳をやめる必要がある場合に、その日に向けて準備し計画的に授乳をやめていく方法です。徐々に完全な卒乳へと移行していきます。必要に応じて母乳を止める薬が処方されることもあります。

●自然卒乳

お子さまが自分の意思で卒乳するまで見守り、自然な形で卒乳を目指します。タイミングは子どもによってそれぞれ異なります。


卒乳のタイミング

卒乳のタイミングに目安はあるのでしょうか?「1歳になったら卒乳をしよう」と考える方もいるかもしれませんが、年齢や月齢による決まりはありません。また離乳の完了は、母乳やミルクを飲んでいない状態を意味するものでもありません。
この点を勘違いして卒乳を焦ってしまうママもいるようです。
離乳とは授乳していない状態のことではなく、授乳をしなくても食事から十分な栄養を摂れるようになることをさします。そのため、離乳が完了すればいつでも授乳を卒業できますし、そのペースはママと赤ちゃんに委ねられます。

では、世界の水準に目を向けてみるとどうでしょうか。
WHO(世界保健機関)では、『生後 1 時間以内に母乳育児を開始し、6 ヵ月間は完全母乳で育て、2 年以上母乳育児を続けることができれば、衰弱や肥満など子どもを栄養不良から守ることができます。また、母乳育児は赤ちゃんの最初のワクチンの役割を果たし、多くの一般的な病気から赤ちゃんを守ります』と、2歳までの母乳育児を推奨しています。※3

また、仕事復帰のタイミングが必ずしも卒乳のタイミングではありません。仕事をしながらでも部分的な卒乳で授乳を継続しているママもいます。お子さまが保育園に入園し新しい環境に戸惑い、前よりも母乳を欲することもあるでしょう。
生後12ヵ月から18ヵ月に離乳を完了し、食事から様々な栄養を摂取していくべきですが、上記でもお伝えしたように母乳・ミルクは継続しても構いません。
授乳をやめる時期はママと子どものそれぞれの心の状況やライフスタイル、タイミングで決めてくださいね。

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卒乳に向けての準備

自然卒乳を除き、いよいよ卒乳を考えると、卒乳に向けてママと赤ちゃん2人の準備が必要になってきます。それぞれ確認していきましょう。

赤ちゃんの準備

  • 母乳、ミルク以外に3回食事を摂ることができている
  • 水分補給が母乳やミルク以外で摂れている
  • メンタルが安定している
  • 卒乳するイメージを持たせていく

ママの準備

  • 体調が優れている(乳腺炎を起こしていない)
  • スケジュールに余裕がある
  • 授乳以外の愛情方法を増やしていく

赤ちゃんにとって母乳は栄養補給以外に、ママとの繋がりを感じる安心ツールでもあります。
ですので、お互いに穏やかな精神状態の時にトライすることがおすすめです。
お子さまによっては卒乳の際に母乳を欲しがって数日泣いてしまうこともあります。寝かしつけはパパにお願いして母乳を忘れられる空間作りも良いでしょう。
他にもパパが長期休暇を取得するなど家族の協力も必要となります。

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ママやパパが話していることが理解できる年齢であれば、卒乳の2週間〜1ヵ月前から卒乳に関連した絵本を読み聞かせしたり、シールカレンダーを作成してお子さまに貼ってもらうのも良いでしょう。
その他の方法として、「この日におっぱいが好きなキャラクターになっちゃうんだよ」と伝え、数日かけて乳房に絵を完成させていく方法もあります。
昔はカラシやわさびを塗ってやめさせた話も聞きますが、お子さまのトラウマにもなりますし、良い選択とは言えません。
卒乳の仕方もお子さまによってそれぞれで、案外あっさり卒乳する子もいれば、3日間激しく泣いたけど、その後はケロッとしていた、という子もいます。
ママの中で絶対に卒乳するぞ!と意気込まず、お子さまの様子を見ながら進めていけると良いですね。

また、1日8回〜10回ほど授乳をしていた場合、ある日突然母乳をやめてしまうと乳房内に乳汁が過剰に溜まってしまいます。その結果、乳房に強い張りや痛みが生じ、悪化すると乳腺炎や乳腺潰瘍に移行するリスクも上がります。準備として、「卒乳する日」の数ヶ月前から授乳間隔を少しずつあけて、1回の授乳時間を短くするなど計画的に行い、母乳が作られる量を徐々に減らしていきましょう。

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卒乳を見送る決断も必要

●ママやお子さまの体調不良時

卒乳の時は、夜泣きをしたり機嫌が悪くなる事が多いです。そして赤ちゃんが体調不良の時ほど母乳を欲しがったり、機嫌が優れない子も多いです。多くの人が卒乳を考える1歳ごろは、保育園やママやパパの職場復帰もあり、外の菌やウイルスを貰ってきやすい時期にもなります。体調不良の時はお子さまのケアを優先して、卒乳は延期する様にしましょう。

また、ママにおっぱいトラブルがある時も避けましょう。今まで排出されたていた母乳が溜まるために乳腺炎に移行する方もいます。トラブルが出た場合には一旦計画卒乳を中断し、お互いのコンディションを見ながら進めていきましょう。

●お子さまが3日以上泣き、精神状態が乱れている

卒乳中は、大好きな母乳がほしくて泣くこともあるでしょう。しかし、癇癪の様に泣き続け、3日経っても母乳を欲しがる時は要注意です。卒乳のタイミングが早かったのかもしれません。その時は、計画を練り直す気持ちの切り替えも必要です。

●大きなイベントの前後

お子さまの入園前や引越し、旅行前後など普段とは異なるイベントの前後は避けるのが良いでしょう。ママも忙しくなりますし、赤ちゃんもいつもと違うペースに不安を抱きます。母乳は安心できるツールでもありますので、特にイベントのない期間で、ママ以外の家族が安心できる環境を作れる時期に調整する様にしましょう。

●卒乳時の相談場所

卒乳の際の乳房ケアは基本触らないことです。とくに乳首を触ってしまうと、より乳汁分泌が増えてしまうこともあります。ですが、乳房の状態もママによって様々です。自己流でケアを行ってしこりになったり、乳房が痛くなるケースもありますので、卒乳前には母乳外来や訪問ケアをしている助産院や病院をチェックしておくと良いでしょう。特に、卒乳の計画段階から相談できる関係性だとより良いですね。


卒乳後はプロラクチン・オキシトシンと呼ばれる女性ホルモンの変化もあり不安になりやすい時期です。1人で抱え込まず、専門家を頼ってくださいね。

気になることがあれば、いつでもXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

参考文献

※1 授乳・離乳の支援ガイド,厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」改定に関する研究会,2019
https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000496257.pdf

※2 「母子健康手帳改正に関する検討会」の報告について,厚生労働省,2003,2022/9/7閲覧
https://www.mhlw.go.jp/shingi/0111/s1130-1.html

※3 Joint statement by UNICEF Executive Director Henrietta Fore and WHO Director-General Dr. Tedros Adhanom Ghebreyesus on the occasion of World Breastfeeding Week,WHO,2022/9/7閲覧
https://www.who.int/news/item/01-08-2021-joint-statement-by-unicef-executive-director-henrietta-fore-and-who-director-general-dr.-tedros-adhanom-ghebreyesus-on-the-occasion-of-world-breastfeeding-week


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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