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【助産師執筆】産後49週(産後12ヵ月)
保育園で風邪をもらってきた!
赤ちゃんの病気と受診の目安

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赤ちゃんももうすぐ1歳。家族で遠方にお出かけする機会が増えたり、ママも仕事に復帰し赤ちゃんは保育園に行き始めたりと、新しい生活リズムになるご家族も多くおられるかと思います。
環境の変化だけではなく、生後3ヵ月を過ぎた赤ちゃんは、産まれた時にママのカラダからもらった免疫ではなく、赤ちゃん自身のカラダから作り出す免疫に変わっていく時期でもあります。保育園に通いはじめると、どうしても病気をもらってきてしまうこともありますが、その経験を通して自分で免疫を作り出していきます。
今回は、赤ちゃんがよくかかる病気や受診のポイントについて助産師がわかりやすくお伝えしていきます!

  • ママからの免疫から赤ちゃん自身の免疫にスイッチするのは生後3ヵ月頃
  • 乳幼児期にかかりやすい病気
  • 病気にかかる前に、今から確認しておこう

赤ちゃん自身の免疫にスイッチするのは生後3ヵ月頃

「生後6ヵ月頃までの赤ちゃんはママからもらった免疫があるので、風邪をひきにくい」や「赤ちゃんは免疫力が弱いから病気にかかりやすい」など、いろいろな情報があって戸惑ったり、発熱や発疹など赤ちゃんが初めて病気にかかると慌ててしまったり、慣れないことが続く新生児〜乳児期の生活だと思います。
細菌やウイルスからカラダを守ってくれるのが「免疫」です。わたしたちのカラダのなかにある免疫を「免疫グロブリン」といいます。そんな免疫グロブリンにはIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類があり、それぞれ別々の方法で免疫機能を果たしてくれています。
その中で、ママから赤ちゃんにあげられるものとして、IgG、IgA、IgMがあります。IgGはママから胎盤を通じて赤ちゃんに移行します。ママ由来のIgGは出生後徐々に少なくなり、生後6ヵ月頃にほぼ消失します。赤ちゃん自身が自分でIgGを十分に作りだすまでの間、つまり生後3ヵ月頃が免疫グロブリンの値が最も低く、病気にかかりやすいといわれています。IgAとIgMは初乳の中に多く含まれており、母乳を通して赤ちゃんの体を守ってくれています※1
生後しばらくはママからもらった免疫に守られ、そのあとは自分のカラダが病気に感染することによって赤ちゃん自身で免疫を獲得していきます。しかし、ママからもらった免疫だけでは守りきれない百日咳、結核、水痘などの病気があるので、生後2ヵ月という早い時期からワクチン接種が始まります。

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乳幼児期にかかりやすい病気とは

では、いつどんな風邪や病気にかかりやすいのでしょうか?
病気の種類によって

  • 年齢によって感染しやすい時期がある程度決まっているもの
  • 年齢関係なく季節によって流行しやすいもの
があります。※2

年齢によって異なる感染しやすい病気

  • 乳児期:突発性発疹、急性細気管支炎など
  • 幼児期:風疹、麻疹など
  • 学童期:伝染性紅斑(りんご病)、猩紅熱(しょうこうねつ)など

季節によって異なる感染しやすい病気

  • :ヘルパンギーナ、手足口病、プール熱など
  • :インフルエンザ、RSウイルス感染症、ロタウイルス、感染性の下痢症など
この中でも、乳幼児期にかかりやすいとされる代表的な病気として、突発性発疹、プール熱(アデノウイルス感染症)、ロタウイルス胃腸炎、RSウイルス感染症、ヘルパンギーナなどがあります。

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それぞれ発熱、嘔吐、下痢、咳、発疹などの症状が出ることもあり、自分で判別することは難しいです。気になった時は、以下の目安を参考に、かかりつけ医を受診しましょう。


「なんだかいつもと様子が違う」その気づきを大切に

受診の目安として、以下を参考にしてみましょう。

時間外でも受診

  • いつもと様子が違う
  • 元気がない
  • まったく食欲がない
  • ぐったりしている
  • ひどく機嫌が悪い

時間内に受診

  • 元気だが、症状が続いている
  • 元気で食欲もあるが、症状が前日より悪化している

ホームケアで大丈夫

  • 38度未満で元気で食欲もある、他に症状はない
  • 1~2回吐いただけで機嫌もよく、とくに気になる症状がない

ここで大切なのは、毎日たくさんの時間を一緒に過ごしているママ・パパが感じる、我が子の「いつもと様子が違う」という気づきです。
「まだ大丈夫だろう」「こんな症状で病院に行って迷惑かも」という声を聞くこともありますが、いつもと違うと感じたときは、自分で判断してしまうのではなく、かかりつけの小児科で診てもらいましょう。
そのときに「普段の様子とどう違うのか」を伝えましょう。
普段の食事量と比べて半分以下しか食べられないとか、以前は熱があっても遊んでいたけれど今日はぐったりしていて遊ばないという、ママ・パパでないとわからないことが、診断の参考になります。※8


病気にかかる前に、今から確認しておこう

赤ちゃんが病気にかかってから対応を考えていると、いざというときに焦ってしまいますよね。事前に、どこに連絡や相談をしたらよいか把握しておきましょう。
赤ちゃんが病気にかかった時の相談先として、以下があげられます。

●かかりつけ医
かかりつけ医はママ・パパの育児サポーターです。元気なときの赤ちゃんの様子や家族構成なども把握していて、病気や薬だけでなく、予防接種や育児不安についても相談できます。いざという時には、適切な病院やお医者さんを紹介してもらうこともできるので、赤ちゃんが病気にかかった時はまずかかりつけ医を受診しましょう。※9
●小児科救急
赤ちゃんの体調不良は突然やってきます。かかりつけ医の診療時間内ではなかったり、休診日に体調が悪くなることもあります。そんなときに診察してもらえるのが「小児科救急」です。お住まいの自治体によって担当する先生や病院が決まっているので自治体の広報紙や、インターネットで「○○○(市区町村名) 小児科救急」などと検索すると確認できますので、お住いの自治体で決まっている対応については事前に調べておいてくださいね。
●小児救急電話相談#8000
かかりつけ医の診療時間になるまで待っても平気か、すぐに救急外来に行くべきか、迷った時は「小児救急電話相談#8000」に電話して相談しましょう。平日夜間・休日の電話相談窓口であり、全国統一の電話番号ですが、各都道府県ごとに対応しており、携帯電話からもかけられます。※10

万が一に備えて家族でもシミュレーションしておこう

ママがいないときやパパがいないときに赤ちゃんが体調不良になったら誰に連絡を取るのか、何を持って病院受診するのか、必要なもの(診察券や保険証等)はいつもどこにあるのかなどを普段から家族で共有しておくと、万が一のときにとても助かります。
毎日忙しいとなかなか「万が一」のときのことを話す機会は少ないかもしれません。この記事をきっかけに是非ご家族で話してみてくださいね。


いかがでしたでしょうか?赤ちゃんの病気は、いつかかるのか、大丈夫なのかとても不安ですよね。記事の中にある病気や症状については一般的なものですので、自分で判断したりせず、悩んだときや「おかしい」と思ったときは必ず小児科を受診するようにしてくださいね。

また、育児に関して気になることはXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

参考文献

※1 仁志田博司,新生児学入門第4版,医学書院,2013,p333-334

※2 前川喜平, 財団法人母子健康協会 第31回シンポジウム「保育園・幼稚園における感染症と対応」1.「乳幼児の感染症の特徴」, 公益財団法人 母子健康協会, 2022/12/14閲覧,
https://jp.glico.com/boshi/futaba/no75/con03_03.htm

※3 突発性発疹とは, 国立感染症研究所感染症情報センター, 2022/12/6閲覧,
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/532-exanthem-subitum.html#:~:text=%E7%AA%81%E7%99%BA%E6%80%A7%E7%99%BA%E7%96%B9%EF%BC%88Exanthem%20subitum,%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E5%A4%9A%E3%81%84%E3%80%82

※4 アデノウイルスの種類と病気,国立感染症研究所感染症情報センター, 2022/12/6閲覧,
https://www.niid.go.jp/niid/ja/adeno-pfc-m/2110-idsc/4th/4326-adeno-virus-page2.html

※5 ロタウイルスの概要, 国立感染症研究所感染症情報センター,2022/12/6閲覧,
https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2261-related-articles/related-articles-409/4475-dj4091.html

※6 RSウイルス感染症とは, 国立感染症研究所感染症情報センター, 2022/12/6閲覧,
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/317-rs-intro.html

※7 ヘルパンギーナとは, 国立感染症研究所感染症情報センター, 2022/12/6閲覧,
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/515-herpangina.html

※8 森戸やすみ,小児科ママの子どもの病気とホームケアBOOK,内外出版社,2018

※9 横田俊一郎,最新!赤ちゃんの病気新百科,株式会社ベネッセコーポレーション,2020

※10 子ども医療電話相談事業(♯8000)について,厚生労働省,2022/12/7閲覧,
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/10/tp1010-3.html


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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