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【助産師執筆】産後51週(産後12ヵ月)
噛むことで体を強くする!
噛む力を育てていこう

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1歳を過ぎてくると、食事からの栄養が大切になってきます。バナナくらいの硬さの食材を奥の歯茎で噛んで食べられるようになれば、離乳食の卒業を目指してもよい目安です。食後のミルクや母乳を少しずつ減らしていきましょう。とはいえ、寝る前やおやつの時にフォローアップミルクを与えても良いです。歯の生える時期にも個人差があるので、ママと赤ちゃんのペースで楽しく進めていきましょう。今回は幼児食の始め方や噛むことの大切さについてお話ししていきます。

  • 噛むチカラをつけると良いことがたくさんある
  • 子どもの頃から噛むチカラをつけよう
  • 1歳頃の歯と噛むチカラって?
  • 適切に噛めているか大人がチェックしよう
  • 噛むチカラに合わせた食事形態が大切
  • 歯磨きを始めよう

噛むチカラをつけるとどんないい事があるの?

噛むことには良い事がたくさんあります。小さなうちからよく噛んで食べる習慣をつけることが大切です。
噛むと出てくる唾液はとっても大切

唾液は酵素を多く含んでいるので、食べ物の消化や吸収を助ける働きがあります。その他にも、歯ですりつぶされた食べ物と混ざりあうことで、飲み込みやすくしてくれたり、食材の味をしっかり感じる事ができます。また、むし歯菌がつくり出す酸の中和、口に入った細菌の毒性を減らすなどの役割もあります。唾液は緊張していると出にくくなってしまうので、楽しく食事をすることや、よく噛むことが大切です。

噛む事は脳の発達を促す

歯根膜(しこんまく)という食べ物を噛んだ時の衝撃を和らげたり、食べ物の大きさや硬さを脳に伝える組織があります。歯根膜から伝わった情報を受けて脳はその食べ物に合った噛み方をするように指令を送ります。色んな形や硬さの食べ物を噛むことで、脳への刺激が増えて活性化します。また、噛むことで血流が良くなり、脳へ酸素や栄養素がたくさん運ばれやすくなります※1。よく噛んで食べる習慣は大人になっても大切なことです。 子どもの頃から習慣化することで将来的な健康にもつながります。


1歳頃の歯の生え方と噛むチカラ

大人は親知らずを含めずに上下16本、8対の奥歯がありますが、1歳頃の赤ちゃんの歯は上下2本の計4本程度しかありません。そのため大人と同じように噛んだり、歯で食べ物を細かくすりつぶして唾液と混ぜることができません。この頃の特徴としては、前歯を使わずに、食べ物を口の中に押し込んでしまいがちです。そのため、舌と上顎、歯茎ですりつぶせる硬さであれば飲み込むことができますが、そうでないものは口の中に溜まってしまい、最終的に吐き出すことがあります。吐き出す姿を見ると、味が苦手だったのかな?と考えがちですが、上手に噛めない(飲み込めない)ことが理由の場合もあります。また、上下で4本程度というのはあくまで目安であり、個人差がありますので、まだ赤ちゃんに歯が生えていなくても焦らなくて大丈夫です。大切なのは、赤ちゃんの噛むチカラに合わせた食べ物の形や硬さに配慮することです。
また、舌の動きも未発達で大人のように奥歯でつぶしきれずに口の中に落ちた食べ物をまた舌で歯に乗せるという動作も上手にできません。赤ちゃんにとって噛んで食べるという行為はとても大変なことだと知っておきましょう。だからこそ、楽しい食事タイムを心がけたいですね。

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噛んで食べているか見てみよう※1

小さいうちは、上手に噛めているか大人がチェックしてあげましょう。

1.前歯で噛み切れているか
まず、前歯は大きな食べ物を嚙み切ることが役割です。前歯で噛めているか、逆に前歯だけで噛んでいないかをチェックしましょう。前歯だけで噛んでいる場合は歯茎でつぶせる柔らかさの食べ物を与え、奥の歯茎ですりつぶして唾液と混ぜる感覚を教えてあげましょう。
2.ほっぺたは動いているか
次に、ほっぺたがちゃんと動いているかチェックしましょう。ほっぺたが動かずごっくんしている場合は、噛まずに飲み込んでいる可能性があります。食材を細かくし過ぎていないか、柔らかくしすぎていないかなど調理方法を確認してみましょう。
3.口は閉じられているか
最後に口を閉じて食べているかチェックしましょう。大人にとっては当たり前に感じるかもしれませんが、噛むことに慣れていない赤ちゃんは口を開けたまま噛もうとしていることもあります。口を開けたままだと食べ物と唾液を上手に混ぜることもできませんし、上手に飲み込むこともできません。大人が手本を見せたり、口が開いている時は「お口を閉じて食べようね」といった声かけをしたりするのも良いですね。

噛むチカラに合った食事が大切

上下2本、計4本の歯で食べやすい食事はどんな大きさ、硬さでしょうか?先ほどお話ししたように、硬すぎると噛めないし、柔らかすぎても噛まずに飲み込んでしまうのでとても難しいですね。
まず、前歯で噛むという経験をしやすいように、手でつかみやすいものが良いです。硬さの目安は歯茎でつぶせる程度の硬さです。例えば、バナナなどの柔らかいフルーツから少しずつ取り入れると良いですね。それから、加熱することで柔らかくなるじゃがいも、にんじんなどの根菜類や葉ものもおすすめです。根菜類は手づかみしやすいように1㎝角×長さ4㎝程度のスティック状に。葉もの野菜は繊維に対して直角になるように刻みます。柔らかく茹でれば、茎の部分も食べられます。加熱しても指でつぶしにくいお肉やキノコ類は繊維を断つように細かく刻む工夫が必要です。


歯磨きをしてみよう※2

歯が生えてくるとむし歯も気になりますよね。とはいえ、赤ちゃんの歯磨きをいつからどのように始めたら良いか迷う方は多いと思います。
まずは、口に食べ物以外の何かが入る感覚から慣れていきましょう。乳歯が生えてくる前からガーゼや専用のコットンで歯茎をぬぐったり、指にはめるシリコン製のブラシをお口に入れるところから始めるのも良いです。口に何かを入れるのが苦手な子は機嫌が良い時に行い、慣れてきたら寝る前や食後など、時間を決めて習慣にしていきましょう。
口に食べ物以外のものが入ることに慣れてきたら、歯ブラシに変えていきます。自分で磨きたがる場合は持ち手が丸くなっていて、口の奥に刺さりにくい工夫がされているものもあります。また、最初は噛んでしまい、毛先がすぐに開いてしまうので、自分で磨く用の歯ブラシと、ママやパパが仕上げ用で磨く歯ブラシは分けると良いですね。

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いかがでしたか?赤ちゃんは噛む力が未発達なのはもちろん、食器から食べ物を上手に口に運ぶこともできません。落ち着いて座っていることも難しいですし、食べ物で遊び始めて食卓や床が汚れることも多いと思います。しかし赤ちゃんが成長する過程で食事の時間に学ぶことは多く、楽しく食事をするということは赤ちゃんはもちろん、家族にとって、とても大切です。床にビニールを敷くなど簡単に片付けられる工夫を行い、楽しい時間を過ごしてくださいね。

また、そのほかでも気になることはXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

参考文献

※1 伊久美亜紀,初めての幼児食 最新版たまひよ新・基本シリーズ,株式会社ベネッセコーポレーション,2017,p32‐33,p80‐85

※2 子どものお口健康[お口の健康ナビ],一般財団法人日本口腔保健協会,2022/06/15閲覧,
https://jfohp.or.jp/okuchikenko_navi/child/index.html


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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