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【助産師執筆】妊娠12週
検査後をイメージして決断しよう。
今話題の出生前診断について

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妊娠12週(妊娠4ヶ月)ではつわりがピークを迎える方が多くなります。日々体調の変化に戸惑うかもしれませんね。子宮自体も成長し、恥骨結合の上2〜3横指で赤ちゃんの頭くらいの大きさとなります。見た目も下腹部のあたりがふっくらとし始め、ちょっとずつ妊婦さんらしい体型となる時期です。
超音波検査では手足もしっかりして人型がはっきり見えて愛着も増す時期に入ります。この時期に不安に思ったり、頭をよぎるのが出生前診断を受けるか受けないか。出産年齢の高齢化や医療の進歩により出生前診断に注目が集まって、マタニティ雑誌やネットでも特集が組まれています。今回はそんな出生前診断についてお話します。

  • 出生前診断とは出産前に赤ちゃんの異常を知る検査
  • 出生前診断の種類は主に5種類
  • 今話題のNIPT(出生前遺伝学的検査)
  • 出生前診断を受ける前に支援状況も確認

着床前診断・出生前診断・新型出生前診断の言葉の意味

似ているような言葉で混乱しますが、意味は異なります。
それぞれについてまとめて見ていきましょう。

●着床前診断

体外受精の際に卵子と精子を受精させると、細胞が分裂を開始し、”胚”という状態になります。この時点の細胞を少しとり、遺伝子や染色体(遺伝情報がつまった生体物質)に異常がないか調べる検査です。
出生前診断と異なり卵を子宮に戻す前に異常が分かる、体外受精の時のみにできる検査です。
現在、日本では日本産科婦人科学会の指針のもと、重い遺伝性疾患をもつ方の着床前診断が認められ行われています。

●出生前診断

出生前診断とは、羊水穿刺や超音波検査などによって、生まれる前に赤ちゃんに病気や奇形がないか検査することを言います。
広い意味では、赤ちゃんが産まれる前の子宮での状態を診ることはすべて出生前診断と言えますので、妊婦検診の際のエコー検査なども含まれます。
出生前診断では、いくつか分類分けができますので後ほど具体的にお伝えします。

●新型出生前診断(NIPT) ※1

出生前診断の中の非確定検査の一つに分類されます。非確定検査ですので100%断言できるものではありません。
新型出生前診断は無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)、あるいは母体血胎児染色体検査とも言われます。(以下NIPTと記載します。)
NIPTは、お母さんの血液内に含まれる赤ちゃんの染色体を測定する検査です。お腹に直接針を刺さずに、お母さんの採血だけで検査が可能であることから流産などのリスクがなく安全であり、更に検査精度が高いため注目されています。
妊娠10 週という非常に早い時期からの診断が可能ですが、こちらは確定検査ではありません。そのため診断の確定には羊水検査や絨毛検査などの確定検査を受ける必要があります。NIPTはかつて高齢出産などハイリスク妊婦さんしか受けられませんでしたが、対象年齢が取り払われたことで現在は全年齢で受けることができます。


出生前診断の目的

生まれてくる赤ちゃんのうち3〜4%には何らかの異常(染色体異常・先天性代謝異常・遺伝疾患・奇形など)があると言われています。
出生前診断は、生まれて来る前に赤ちゃんの状態や疾患等の有無を調べておくことによって、生まれてくる赤ちゃんの状態を正確に知ることができます。
サポートを受ける福祉サービスや自助グループを調べる時間にあてたり、夫婦間の意思決定を支援することを目的としています。※2


出生前診断の種類

出生前検査は検査の結果に基づいて診断が確定できる「確定的検査」と、診断が確定できない「非確定的検査」に大きく分類分けができます。
確定的検査は羊水検査や絨毛検査、非確定的検査は母体血清マーカー検査、NIPT、胎児超音波検査が該当します。
妊婦検診の時に受ける超音波検査も出生前診断に該当するので、とても身近に感じますね。

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●確定的検査

確定的検査はおなかの赤ちゃんの細胞を使用して先天性疾患(生まれ持った病気)がないか確定する検査のことです。ダウン症などの疾患であればほぼ確実に判定ができます。
その一方で非常に稀ではありますが、0.1〜0.3%程度の確率で流産や破水のリスクが伴います。そのため基本的には非確定検査で高い割合の判断を受けた方のみ行われます。
確定的検査は「羊水検査」と「絨毛検査」の2つに分類されます。

確定的検査の種類

  • 羊水検査:お母さんの羊水を採取し、羊水中に含まれる赤ちゃんの細胞の破片を検査して診断を行います
  • 絨毛検査:お腹の赤ちゃんの胎盤の一部を採取し、検査して診断を行います

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●非確定的検査

非確定的検査は赤ちゃんが先天性疾患を持っている確率を計算するための検査です。非確定的検査は、お母さんにもおなかの中の赤ちゃんにも苦痛や流産の危険が少なく気軽に安全に受けることができます。
仮に高い確率で「染色体疾患が疑われる」ことを示す検査結果がでたとしても、非確定的検査つまり、「診断が確定できない検査」なので、羊水検査や絨毛検査などの「診断が確定できる検査」(確定的検査)を受ける必要があります。※3


遺伝カウンセリングを活用しよう※5

主に確定検査前に行われる遺伝カウンセリングは、夫婦のニーズに合わせた情報を提供し、お母さん達がそれらを十分に理解した上で自分達の意志決定ができるように援助することを言います。
ただ単に遺伝性疾患の医学的情報や検査内容を伝えるのではなく、社会的な支援体制や倫理的問題なども含めた心理的な面もサポートも行います。カウンセリングを通してお母さん自身が納得して選択できることが大切です。
NIPTのように気軽にできる検査が増えた分、遺伝カウンセリングをうまく活用していくと良いです。※4

カウンセリング


出生前診断を受ける心構え

生まれてくる赤ちゃんに生まれ持った病気がないかを早期に分かる事は、お母さん達の気持ちを整える時間作りになったり、サポート体制を整える準備期間が作れたりと、メリットもあります。しかし、NIPTのような確定診断ではない場合、100%疾患を持っているとは限りません。
もちろん、数値が高くても健常児だったという報告もあります。また、検査をしたことで、妊娠中ずっと不安を抱えて過ごす人もいます。なぜ検査を受けたいのか、検査後のイメージを持って話し合うことが大切です。
またNIPTは、血液だけで検査できることから学会の認定を受けていない美容外科や皮膚科などのクリニックにも急速に普及しています。※6
病院のサポート体制はどうなのか施設選びにも配慮して、夫婦で納得した上で選択しましょう。

また、気になることはXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。


参考文献

※1 みんなで話そう 新型出生前診断は誰のため?,厚生労働省,2022/3/4閲覧,
https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000652443.pdf

※2 NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会報告書,厚生労働省,2022/3/4閲覧,
https://www.mhlw.go.jp/content/000783387.pdf

※3 病気がみえるvol.10産科第2版,メディックメディア出版,2011,P64〜67

※4 NIPT等の出生前検査に関する専門委員会,厚生労働省,2022/3/4閲覧,
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-kodomo_145015_00008.html

※5 出生前遺伝カウンセリングに関する提言,日本遺伝カウンセリング学会,2022/3/4閲覧,
http://www.jsgc.jp/files/pdf/teigen_20160404.pdf

※6 広がる「出生前検査」その背景に何が?,NHKクローズアップ現代,2021,
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4515/


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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