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【助産師執筆】妊娠14週
妊娠中はどのくらい動いていいの?
妊娠中の活動や運動についてお答えします

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妊娠14週に入りました。この頃の赤ちゃんは身体の器官形成(形作り)がほぼ終わり、それぞれの機能をつくり上げていく時期です。皮膚の厚みは更に増し、手足には筋肉がつき始める頃です。超音波検査を受けた時には、赤ちゃんの性別を教えてもらう事もあるかもしれません。
ママの変化では、子宮の大きさがグレープフルーツ位に成長します。薄着だと周囲からおなかに赤ちゃんがいることに気づかれる方もいるかもしれませんね。また、胎盤がほぼ完成するため、流産の可能性はかなり低くなり精神的にも安定します。今回は動きやすくなるこの時期に知って欲しい、妊娠期の活動や運動についてまとめました。

  • 妊娠中の運動はメリットがたくさん!
  • ウォーキングでは、なんとか会話できる程度の運動を目安に
  • 無理は禁物!妊娠中の運動の注意ポイントまとめ
  • 自分の体重に合わせてた適切な体重増加量を知ろう
  • 働く妊婦さんに使える制度はこれ!

妊娠中に運動するメリット

妊娠中の運動について、多くのメリットがあります。厚生労働省でも「妊娠中の身体活動・運動で早産および低出生体重児のリスクを増加させない可能性が明らかになってきた」と発表しています。※1
この効果以外にも、いくつかあるので具体的に見ていきましょう。

1.体重管理

妊娠期間中は過度に体重が増えると、それが原因で合併症を引き起こす事があります。妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病などの疾患にかかるリスクが高まり、胎児にも十分に成長しないなどの影響が出る可能性があります。
運動でカロリーを消費したり、基礎代謝をあげることで急激な体重増加を防ぎ、合併症のリスクを低下させる効果があります。※2

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2.つわり・むくみを緩和

体を動かすことにより全身の血流を促し、むくみを解消してくれます。また、軽症のつわりの時は、適度に筋肉が刺激されることで気分転換にもなり、症状が和らぐ事もあるでしょう。

3.便秘・腰痛・肩こりの改善

赤ちゃんの成長によって生じる便秘・腰痛・肩こり等の妊娠期特有の症状は、体を動かすことによって腸がしっかりと動いたり、血流が促進されることで緩和が期待されています。※3

4.ストレス解消・リラックス効果

妊娠するとホルモンバランスが変化し、自律神経が乱れやすくなります。しかし、運動をすることで「セロトニン」という神経伝達物質が分泌され、 このセロトニンは不安な気持ちに働きかけるリラックス効果があります。マタニティブルーやうつの予防効果も期待できます。※4

5.出産・育児への体力づくり

出産の平均時間は、初産婦で 12~16 時間、経産婦で5~8時間と言われています。※5
出産に備えて体力をつけておかないと、陣痛が弱くなったり、最後にいきめず難産になる可能性も出てきます。効率よくいきむためには、下半身であるお腹周り・お尻周りなどの下半身の筋肉や背筋の筋力アップも効果的です。


それぞれの妊娠期に合わせた運動内容

運動時間の目安

具体的にはどのくらいの運動をしたら良いのでしょうか?アメリカ産婦人科学会によると、妊娠中は週に最低150分の中強度の有酸素運動をすることが理想的であるとされています。中強度の運動とは、ウォーキングでは「何とか会話ができるくらい」のペースで、1分間に120歩程度が目安です。また、150分は、平均すると1日あたり30分の運動を週5回行う計算になります。一度に30分続けなくても、10分間の運動を毎日行ってもよいです。※6
この目安は妊娠前から運動をしていた人と、そうではない人で負荷が異なります。あくまでも参考として、自分が心地良い運動を心がけ、苦しい時は無理せず休むようにしょう。
普段から運動をあまりしない方は、最初はゆっくりと始め、徐々に運動量を増やしていきましょう。※2では、いつどのような運動がおすすめなのか見ていきましょう。

●妊娠初期

妊娠初期はウォーキングがおすすめです。気軽に始められますが無理は禁物です。妊娠初期はつわりなどで体調を崩すことが多く、流産のリスクも高いため、運動というよりは自分の生活を整えるようにしましょう。不安な方は医師に相談をしてから始めてみましょう。

●妊娠中期〜後期(妊娠16週以降)

妊娠中期以降になると、つわりも落ち着き、体重も急激に増加しやすくなります。無理のないペースでできる、有酸素運動が妊娠中には最適です。
例えば、マタニティヨガやマタニティスイミング、マタニティビクス、ウォーキング、などがあります。中でもヨガは“うつレベルが下がった”との報告があり、お産の時の呼吸法の練習にも繋がります。※7
また、妊娠後期は安産のためにスクワットを行うのも良いでしょう。

マタニティヨガ


妊娠中に運動する時の注意点

母子の健康のために運動を取り入れますので、運動をして体調を崩したり怪我をしてしまっては本末転倒です。まずは担当医に確認をしてから運動をする、しないを決めていきましょう。そのほかの具体的な注意点を以下にまとめました。

●ママの状態

  • 1.現在の妊娠経過に問題がなく、前回の妊娠も早産や繰り返す流産を経験したことはない
  • 2.赤ちゃんの発育に異常がない
  • 3.原則妊娠 12 週以降で妊娠経過に異常がないこと※8
  • 4.運動中におなかが張る、痛む、気分が悪くなるなどの異変を感じたらすぐにやめる
  • 5.母子手帳と診察券を常に携帯する
  • 6.体調が思わしくないときはお休みする

●環境

  • 1.真夏の炎天下や雨など天候の悪い日などに外で行うものは避けましょう
  • 2.転びにくい、平坦な場所で行いましょう。不安定な場所での運動は控えましょう

●実施時間

  • 昼間の時間帯(何か症状がでた時に受診できる時間帯を選びましょう。)
妊娠期の体重について

妊婦さんが気になるのが体重増加。増え過ぎると産院で指導を受けたり合併症のリスクが出てきます。また痩せすぎもよくありません。
妊婦さんは、赤ちゃんの発育をサポートするためにも適正体重を維持しながら妊婦生活を過ごすように意識することが大切です。※9

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通勤・仕事調整について

最後に、運動方法に加えて、働く妊婦さんが安心安全に過ごすための法律をいくつか紹介します。知っておくと便利なことですので、困った時にはぜひ活用くださいね。

母性健康管理指導事項連絡カード

母性健康管理指導事項連絡カード(以下、母健連絡カード)は、主治医等が行った指導内容を、妊婦さんから事業主へ的確に伝えるためのカードです。
事業主は、母健連絡カードの記載内容に応じて対応する義務が国から定められています。例えばつわりなどの症状、また産後に使用できます。※10

男女雇用機会均等法における母性健康管理

・保健指導や健康診査を受けるための時間の確保
・妊娠中の通勤緩和
・妊娠中の休憩についての配慮
・妊娠中又は出産後の症状に対応する

労働基準法における母性保護規定

・時間外、休日労働、深夜業の制限
・変形労働時間制の適用制限
・妊婦の軽易業務転換(妊娠中)

医師等の指導をうけて、妊娠中の女性従業員から申し出があった場合

■時差出勤
・始業及び就業時間に各々30~60分程度の時間差を設ける
・フレックスタイム制度の適用
■勤務時間の短縮
・1日30分~60分程度の時間短縮
■交通手段・通勤経路の変更
・混雑の少ない経路への変更などができます。※11


妊娠してからの運動や活動をどの程度行えば良いのか分からないお母さんは多いと思います。妊娠期によって運動量も多少異なりますが、一番はお母さんと赤ちゃんが心地よく動ける事です。自分の体を観察して、無理のない範囲で妊娠中の運動を楽しんでください。
また、産休に入るまで働いているお母さんも多いと思います。日本には働く妊婦さんを守る法律がいくつもありますので、自分に合うものはないか確認することをおすすめします。活動のバランスを上手くとって有意義なマタニティライフを過ごせますように。

気になることはXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

参考文献

※1 妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくりを~,厚生労働省,2021

※2 使える!助産ケアのエビデンス,ペリネイタルケアVol26,2007

※3 マタニティーエクササイズ,厚生労働省,2022/3/25閲覧,
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-084.html

※4 妊産婦に対するウィメンズヘルス理学療法,理学療法の臨床と研究第 27 号,2018

※5 産科における看護師等の業務について,厚生労働省,2022/3/25閲覧,
https://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/jigyo/SOUMU/2005/05Sep2005.pdf

※6 【医師監修】妊婦さんは運動不足になりやすい!おすすめの運動3選,子育てアクアプラン,2022/3/25閲覧,
https://www.aquaclara.co.jp/kosodate/column/column03.html

※7 妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル,公益社団法人 日本産婦人科医会,2022/3/25閲覧,
http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/11/jaogmental_L.pdf

※8 妊婦スポーツの安全管理基準,日本臨床スポーツ医学会誌Vol. 13.,2005

※9 「妊産婦のための食生活指針」改定の概要,厚生労働省,2021

※10 母性健康管理指導事項連絡カードの活用方法について,厚生労働省,2022/3/25閲覧,
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/josei/hourei/20000401-25-1.htm

※11 母性健康管理研修会―働きながら、安心して妊娠・出産できる職場づくりのために―,厚生労働省,2022/3/25閲覧,
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/kenshu/


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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