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【助産師執筆】妊娠25週
早朝にびっくりして起きてしまう…
こむらがえりなど、足のマイナートラブル

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妊娠25週ですね。妊婦健診を受ける時はもちろんですが、外出時は常に母子手帳を携帯しましょう。次回の妊婦健診までの2週間の間でも、色んな体調の変化や不安がありますよね。自分自身の記録を書いたり、聞きたいことをメモして挟むと、聞き忘れ解消にもなりますよ。
この時期の赤ちゃんの体重は、約550g〜1000g程度※1です。赤ちゃんはものを見れて光を感じます。また、大脳皮質が発達してくるので、身動きができるようになります。妊娠24週では中期検査の内容として、妊娠糖尿病についてお話ししました。その他、妊娠中期になると経腹エコーによる超音波検査や、状況に応じて経膣エコーによる超音波検査を行う方もいます。
妊娠中期は、安定期とはいえ、数々のマイナートラブルが多く出現しやすい時期です。今回は特に、こむら返り・静脈瘤・浮腫などの足のマイナートラブルについてお話しします。

  • 妊娠中期には、こむら返り・静脈瘤・浮腫が起きやすい
  • こむら返りにはマグネシウムを意識した食事が大切
  • 静脈瘤には生活習慣の見直しが必要
  • 足の浮腫はかくれ妊娠高血圧腎症に要注意
  • 大切なことは体重管理・セルフケア・休息

こむら返りとは?

こむら返りは、脚の筋肉が突然、過剰に収縮して激痛が起こる症状のことです。「こむら」はふくらはぎ(腓腹筋)のことを指し、医学的には有痛性筋痙攣と言われています。
ふくらはぎに多くみられますが、ふともも、足の指などにも起こることがあります。かなりの痛みを伴いますので、辛いですよね。頻繁に起こる場合は日常生活に支障をきたしたり、睡眠を妨げたりといった影響まで及ぼします。
妊婦さんの33〜50%がこむら返りを経験するしているとされ、週数が進むにつれて症状が増悪する傾向があると報告されています。※2

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こむら返りの原因
●電解質バランスの乱れ

妊娠中はマグネシウムが不足しやすくなる傾向があります。マグネシウムは細胞の間のカリウムやカルシウムの移動を手伝う役割もあるので、マグネシウムが減ると他の電解質の働きも悪くなります。特に、妊娠中期を過ぎるとマグネシウムは急激に減るため、食事から補ってあげることが重要です。※3,4
では、どのくらい補えばいいでしょうか?厚生労働省によると、マグネシウムの食事摂取基準(mg/日)※5,6 1日当り推奨量は、30~49歳の女性290 mg/日、妊婦(付加量)+40 mgとされています。
マグネシウムが多い代表的な食品は、干しひじき、とろろ昆布、カットわかめなどの海藻類、アーモンドなどナッツ類、いわし魚などです。サプリから摂取するのも良いですし、シリアルにもマグネシウムが強化されているものがあります。
また、カルシウムの働きに重要な役割を果たしていますので※7、なるべく乳製品などと組み合わせると吸収率が上がって良いでしょう。食事は毎日のことなので、無理なく楽しみながら継続できると良いですね。

●血液循環の悪化

妊娠中は、ホルモンの影響で週数が進むにつれて身体の血液量も増加し、大きくなった子宮で骨盤静脈が圧迫され、血液循環が悪くなりやすいです。
この血液循環がうまくいかないことが原因で、身体の末端の足元や指先が冷えやすくなるため、コラム後半にお話するセルフケアが大切になってきます。


静脈瘤とは?

静脈瘤とは、血管の壁にある弁が弱くなり血液が停滞してしまい、コブのような膨らみが出てくることです。妊婦さんは、長時間の立ち仕事や、デスクワークなどには気をつけましょう。実は、妊娠中の静脈瘤や浮腫の治療法については、十分な医学的根拠がないと言われています。※8
静脈瘤は産後に少し改善しますが、完全に消失しない人も多いため、できるだけご自身の仕事内容や、日頃の生活習慣から対策をしていくことが大切です。

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浮腫とは?

浮腫とはむくみのことです。妊娠に伴って、体に水分を保持させるホルモンが多く分泌され、さらに大きい子宮が脚から心臓への血流を圧迫することでも、体に水分が貯まってむくみやすくなります。
妊娠高血圧腎症など隠れた合併症の可能性も少なくありませんので、以下の場合は注意が必要です。もともと高血圧、腎臓の病気など持っている、肥満、40歳以上、家族に高血圧の方がいる、双子など多胎妊娠中の方、初産婦さんは気をつけましょう。※9

<あわせて注意する症状>

  • 血圧が140/90mmHg以上
  • 片方の脚またはふくらはぎのみのむくみで、特にその部位に熱感、発赤、または圧痛がある場合や発熱がある
  • 手のむくみ
  • 急に悪化するむくみ
  • 錯乱、呼吸困難、視覚の変化、振戦(ふるえ)、けいれん、急な腹痛、急な頭痛(妊娠高血圧腎症によって起こる可能性のある症状)

「こむら返り」「静脈瘤」「浮腫」その対策は?

●体重コントロール

妊娠中期は、体重増加が加速しやすい時期です。ご自身がどれだけ体重が増えても良いのかは、非妊娠時の体格によって異なります。※10
体重管理については、皆さんとても気になると思いますので、次回コラムでしっかりお話しますね。

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●日常生活でのセルフケア

日々の暮らしの中で、以下のセルフケアを意識することが大切です。

セルフケアをやってみよう!

  • 左側を下にして横になることで、心臓に戻る血液が流れる太い静脈(下大静脈)を子宮が圧迫しなくなる
  • 脚を挙上してリラックスする
  • 弾性サポートストッキングを着用する
  • 血流を妨げないゆったりとした衣服を着用する(例えば、足首やふくらはぎの周りを締めつける靴下やストッキングを穿かない)
  • 温かい飲み物、服装、半身浴など、冷え対策をする
  • 軽いストレッチやマッサージ、運動を行う
  • 姿勢を意識し、足に負担のかからない靴を選ぶ
●休息を確保する

睡眠を十分に確保したり、ゆったりとした気持ちで過ごせるようにしましょう。しかし、中には仕事も忙しく、休息が取れない方もいらっしゃると思います。その場合には、ぜひ「母性健康管理指導事項連絡カード」※11を活用してみてください。
こちらは、医師等の女性労働者への指示事項を適切に事業主に伝達するためのツールです。働く妊産婦の方が、医師等から通勤緩和や休憩などの指導を受けた場合、その内容を事業主の方に的確に伝えるために利用するものです。
体調不良があり、仕事との両立に不安があると、実力も発揮できず辛いですよね。気になる方は、一度かかりつけの病院などにご相談ください。


いかがでしたか?こむら返り・静脈瘤・浮腫は、妊娠中によく見られる身近な症状にも関わらず、受診せずご自身で様子をみる方も多いと思います。
こむら返りは、つま先をおなかに向けるようにして、ふくらはぎを伸ばすと治りやすいといわれていますが、ママ1人ではとても大変です。パートナーやご家族と一緒に、このコラムを読んでいただき理解してもらうと良いですね。
不安なことや分からないことは、ぜひかかりつけの病院に聞いてください。

また、気になることはXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

参考文献

※1 胎児計測と胎児発育曲線について,日本産科婦人科学会周産期委員会,2022/3/11閲覧,
https://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/PUB/ninken/jsog_20111024.pdf

※2 Hensley JG.Leg cramps and restless legs syndrome during pregnancy.J Midwifery Womens Health 2009;54:211-8.

※3 Chayanis Supakatisant ,Vorapong Phupong,Oral magnesium for relief in pregnancy-induced leg cramps: a randomised controlled trial,Matern Child Nutr,2012.

※4 Zhang X, Li Y, Del Gobbo LC, Rosanoff A, Wang J, Zhang W, Song Y. Effects of Magnesium Supplementation on Blood Pressure: A Meta-Analysis of Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Trials. Hypertension 68:324-333, 2016.

※5 日本人の食事摂取基準(2020 年版),厚生労働省,2022年3月11日閲覧,
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

※6 「妊婦の食事摂取基準」《参考資料1》対象特性 1 妊婦・授乳婦,厚生労働省,2022年3月11日閲覧,
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

※7 ミネラル,一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所,2022年3月11日閲覧,
https://www.orthomolecular.jp/nutrition_cat/mineral/

※8 妊娠中の静脈瘤および下肢浮腫に対する介入,コクラン,2022年3月11日閲覧,
https://www.cochrane.org/ja/CD001066/PREG_ren-shen-zhong-nojing-mo-liu-oyobixia-zhi-fu-zhong-nidui-surujie-ru

※9 妊娠高血圧症候群,日本産科婦人科学会,2022年3月11日閲覧,
https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=6

※10 「妊産婦のための食生活指針」改定の概要(2021年 3月),厚生労働省,2022年3月11日閲覧,
https://www.mhlw.go.jp/content/000776927.pdf

※11 「母健連絡カード」(母性健康管理指導事項連絡カード)について ,妊娠・出産をサポートする女性にやさしい職場づくりナビ,厚生労働省委託母性健康管理サイト,2022年3月11日閲覧,
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/renraku_card/


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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