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【助産師執筆】妊娠28週
予期せぬ時にも医療でサポート!
MFICU/NICU /GCUについて知っておこう

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いよいよ妊娠後期に入りました!この時期の赤ちゃんの体重は850~1500g程度※1に成長し、お母さんからの免疫もたっぷりと送り込まれる時期です。羊水の量もピークに近くなり、むくみやすかったり、腰痛などの不調も出てくる時期です。今まで以上に体をいたわりながら過ごしてくださいね。
そろそろ出産の場面をイメージをする方もいらっしゃるのではないでしょうか。楽しみな気持ちはもちろん、”ママや赤ちゃんに何かあったらどうしよう?”と不安を抱く方も多いと思います。

昔から“お産は命がけ”というように、お母さんも赤ちゃんもきっと人生で一番の荒波を乗り越えなければならないでしょう。医療を必要とする場合があるかもしれません。しかし、現在では素晴らしい医療の発達とスタッフの手で救える命が増えてきました。今回は、予期せぬ事態に陥った時にも、病院スタッフがどのような体制で皆さんをサポートするかお話しします。

  • 妊娠28週は生存率が上がるターニングポイント
  • ハイリスクなママをサポートするのはMFICU
  • 生まれたばかりの赤ちゃんを支えるNICU
  • おうちに帰る準備をするGCU
  • 医療スタッフがハイリスクな赤ちゃん・家族を支える

赤ちゃんの発育と起こりうるリスク


28週を超えると少し安心!

ここ20年で医療の進歩と共に、小さく生まれて来た赤ちゃんの生存率も大幅にアップしています。現在の週数別の生存率は24~25週で86.5%、26~27週で94.0%と徐々に高くなってきており、28~29週で96.7%、30~31週で97.5%※2(表1)と28週を超えるとほぼ横這いになります。
そして、28週では胎児の体重も約1000gを超えてくるので(表2)生存率もアップします。つまり、この28週を超える事がとても意義のあることです。目の発達に関しても大きなターニングポイントで、未熟児網膜症という目の血管の病気の発症率も28週を超えて、ようやく減少し始めます※3
また、3歳になったときの発達を比較した別の研究では、在胎期間が短いほど合併率が高いことが明らかですが、特に発達遅延の割合は在胎週数22数から28週まで週数毎に低下し、29週以降は約10%で横ばい※4という事が明らかになっています。その後の赤ちゃんの発達を考えても、とても大切な時期を迎えたということですね。

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サポートの力で安全な妊娠・出産に!

誰もがスムーズなマタニティライフを送ることを想像するでしょう。しかし、一定数でリスクを伴う状態になる場合があります。例えば、早産が起こる確率は妊婦全体の5.7%※5、妊娠中に血圧が上昇する妊娠高血圧症候群は6~14%※6と少し高い割合で認められます。胎盤の位置が下の方につく前置胎盤は0.3~0.5%※7、多胎妊娠は1.9%※8と低い確率ですが、とても慎重な管理が必要となります。
このような妊娠に伴うトラブルにはリスク因子があるのですが、明らかな原因を断定できるものは少なく、ご自身の妊娠や出産がどのようなものになるかは、なってみないと分からないものです。ご自身の力で避けられない事がほとんどですので、どうかご自身を責めないで欲しいと思います。
お母さんにリスクがある時は慎重に見守る必要がありますし、何らかの理由で赤ちゃんが早く生まれた時には、赤ちゃんをケアする医療が必要です。その時のために医療者がいるのです。医療に頼る必要があったときには、安全な妊娠と出産になるように、医師や助産師を頼ってくださいね。ここからは、具体的にどのような医療体制でサポートするのか、お話ししていきます。


ハイリスクなママと赤ちゃんを支える専門病棟

●MFICU:母体胎児集中治療室

妊婦さんにリスクがある場合や、生まれてくる赤ちゃんに何らかのリスクが予測されている場合、また産後の方も慎重に経過観察が必要な場合に入院するお部屋です。赤ちゃんの成長に必要な環境は、お母さんのおなかの中が一番です。そのため、一日でも長くお母さんのおなかにいられるように、お母さんの疾患の治療をしたり、安静を保ってもらったりしています。
急な帝王切開が必要になる事もありますので、すぐに手術室に向かえるように必要なものが準備されていたり、緊急時に備えてスタッフ間でシミュレーションを繰り返して万全を期しています。

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●NICU:新生児集中治療室

NICUは生まれたばかりの、治療を必要とする赤ちゃんが入院する病棟です。とても小さな赤ちゃんは保育器で全身状態を常に観察しながらケアを行います。保育器の中はなるべくお母さんのおなかの中のようにするため様々な工夫をしており、赤ちゃんの寝る向きを変えたり、処置を行うときは、慎重に何人ものスタッフで行っています。
また、赤ちゃんの急変や緊急の出産時に備えて蘇生するための必要な物や温められた保育器が常備されています。MFICUに入院しているお母さんの出産には、NICUスタッフも入り赤ちゃんの最初のケアを担うことが多いので、MFICUスタッフとも連携を取りながら動いています。また、MFICUに入院中の方が、事前にNICUに見学に行くなどして、出産後のケアについて事前に知ることができる病院もあります。

●GCU:新生児回復室

本来は出産直後から、赤ちゃんはお母さんの近くで過ごし、母子ともに産後の生活に慣れて行きます。しかし、治療に専念するために離れ離れになることは辛いですが仕方ありません。赤ちゃんに必要だった点滴や栄養のためのチューブなどが外れ、NICUを卒業すると、退院前にGCUに転棟するケースもあります。
退院までの回復期を、よりお家に近い環境であるGCUで過ごします。GCUでは、授乳や沐浴などの練習をスタッフと一緒に行い、お家に帰る準備を進めていきます。


家族を中心に赤ちゃんを支える

上記のようなハイケアユニットとよばれる場所に入院する必要性を、医師から告げられたときには動揺する方が多いです。自分を責めてしまうこともあるかもしれません。しかし、そういう気持ちになった時は、どうか一人で抱え込まずに周りのスタッフに気持ちを伝えてください。
見慣れない医療機器に囲まれて長時間過ごしたり、保育器に入っている我が子を見て辛いと思うでしょう。医療スタッフはママやパパの気持ちを受けとめながら、心のケアも大切にしていきます。

なぜなら、医療の介入も大切ですが、もっと大切なのは、家族も子どものケアに関わるチームの一員として、両親が子どものケアや意思決定への参加に積極的に関わっていくことだからです。これをファミリーセンタードケア(Family-Centered Care;FCC)といいます※9
こういった考えから、なるべく両親が24時間面会ができるようにしていたり、両親が子どものケアに積極的に参加出来るように、病院では取り組んでいます。

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いかがでしたでしょうか?今回のコラムを読んで、医療者が万全の準備をしている実際を知り、少しでも安心して出産に臨んでもらえればと思います!

また、気になることはXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

参考文献

※1 胎児計測と胎児発育曲線について ,日本産科婦人科学会周産期委員会,2022/3/1閲覧,
https://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/PUB/ninken/jsog_20111024.pdf

※2 低出生体重児 保健指導マニュアル,平成30年度子ども・子育て支援推進調査研究事業,小さく産まれた赤ちゃんへの保健指導のあり方に関する調査研究会,2022/3/1閲覧,
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000592914.pdf

※3 未熟児網膜症,さまざまな眼の病気,日本小児眼科学会,2022/3/1閲覧,
http://www.japo-web.jp/info_ippan_page.php?id=page14

※4 河野由美,Neonatal Research Network of Japan(NRNJ)データベースからみた極低出生体重児の予後,日本周産期・新生児医学会雑誌 56(2), 2020,203-212

※5 全国周産期医療(MFICU)連絡協議会,,改訂3版MFICUマニュアル,メディカ出版,2015,182

※6 全国周産期医療(MFICU)連絡協議会,改訂3版MFICUマニュアル,メディカ出版,2015,190

※7 全国周産期医療(MFICU)連絡協議会,改訂3版MFICUマニュアル,メディカ出版,2015,216

※8 母子衛生研究会,母子保健の主なる統計 平成23年刊行,2011,42‐96

※9 Mikkelsen, G., Frederiksen, K. (2011): Family-centred care of children in hospital—a concept analysis, J. Adv. Nurs.,2011, 67(5),1152–1162.


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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