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【助産師執筆】妊娠35週
早めの対処と予防でマイナートラブルと
上手に付き合おう


妊娠35週に入りましたね。今週も赤ちゃんとママの様子をみていきましょう。
この時期の赤ちゃんの体重は1800~2900g程度※1と個体差が大きい時期ですね。肺の機能がほぼ完成し、産まれてきても自分で呼吸ができるようになります。また、羊水を飲んでおしっことして排出することもできます※2。手足は更にふっくらして手首や足首にくびれができてきます。
また、お母さんはたくさん動いた時や赤ちゃんの胎動を感じた時など、お腹が張りやすくなります。子宮もみぞおちのあたりまで大きくなってきているので、胃が圧迫されて食欲が低下したり、胃もたれしやすくなります※3。そんな時は1回量を減らして少しずつ食べると良いですね。
体型の変化や心の変化も大きいこの時期。自分の身体について知ることで、予防できたり、安心できます。

今回は妊娠後期のマイナートラブルについてのお話です。

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  • マイナートラブルは個人差がある
  • マイナートラブルには原因がある
  • トラブルになる前に早めの対処が大切
  • 困った時はかかりつけに相談する

マイナートラブルって何?

マイナートラブルとは妊娠中に起こる様々な不快症状のことで、その程度や持続期間は個人差があります。マイナーと聞くと小さなトラブルというイメージを持たれがちですが、生活に支障が出てしまうこともあります。多くは一時期のみのことですが、周囲の人に協力してもらったり、時には医療にも頼りながら乗り越えましょう。


マイナートラブルの原因と対策

●胃の圧迫感/胸やけ※3
<原因>
ホルモンの影響で胃の動きが鈍くなります。また、大きくなった子宮に胃が下から圧迫され、胃液の逆流が起きやすくなる事が主な原因です。
<対策>
  • 1日3食から5食等、1回の食事量を減らして回数を増やす
  • 刺激物の摂取を控え胃酸の分泌を抑える
  • 食後はすぐに横にならず、30分程度は体を起こして過ごす
  • 空腹時は胃液が分泌しやすいため、胃が空っぽにならないように適宜軽食をとる
●腰痛/恥骨痛※3
<原因>
お腹が大きくなることで姿勢が大きく変わります。また、妊娠すると、靭帯や関節を緩めるホルモンが分泌され、骨盤がゆるみ不安定になるため、恥骨や腰、背中への負担が大きくなり、痛みが出やすくなります。
<対策>
  • 日常生活の中で絵のような正しい姿勢を心がけ、腰や背中への負担を減らす
  • 寝具は腰が沈み過ぎない硬めのものを使用する
  • 日中はお腹を支えるガードルや妊婦帯を使用する

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●動悸/息切れ※2,3
<原因>
子宮が大きくなると、呼吸を助ける横隔膜が押し上げられ、肺や心臓が圧迫されます。また、妊娠後期は特に、出産に向けて身体の血液量が増えるので少し動いただけでも息が切れたり、動悸が出やすくなります。更に、貧血によっても症状が出やすくなります。 
<対策>
  • 動き始めはゆっくり行動する
  • 仰向けに寝ると背中側の大きな血管がつぶれやすいため左を向いて横になる
  • 貧血がある場合は鉄分を多く含む食品(ほうれん草、しじみ、切り干し大根など)と鉄の吸収を助ける栄養(ビタミンB、C、葉酸、タンパク質)を積極的に摂取する
●浮腫み※3
<原因>
身体の水分量が増えることや、ホルモンの影響により、浮腫みやすくなります。症状が急激に悪化する場合は心配なケースもあるので医師や助産師に相談しましょう。漢方薬を処方してもらえるケースもあります。
<対策>
  • 着圧ストッキングを着用する
  • 夜はクッション等で足を軽く上げて休む
  • 塩分を控えた食事をする
  • 入浴時にマッサージを行う
  • 身体を冷やさない
●静脈瘤※2
<原因>
静脈瘤は、表面にある血管が浮き出た状態になることを言います。妊娠により大きくなった子宮が血管を圧迫することや、ホルモンの影響で静脈血管が拡張することが主な原因 です。
<対策>
  • 長時間立ちっぱなしの姿勢を避ける
  • 着圧ストッキングを使用する
  • 夜はクッション等で足を軽く上げて休む
  • 血管壁補強のためにビタミンA、B、Cを摂取する
  • 血栓予防のためにビタミンEを摂取する
●睡眠※2
<原因>
ホルモンバランスの変化で眠りが浅くなりやすいです。また、子宮が大きくなったことによる様々な不快症状(頻尿、便秘、息苦しさ、腰痛など)や胎動によって不眠になりやすいです。その他、不安なことがある場合や眠れないこと自体もストレスになるので、続く場合は医師や助産師に相談しましょう。
<対策>
  • 適度な運動を行う
  • 寝室の環境を整える(室温、枕の高さ、抱き枕の活用等)
  • 不安な気持ちがある場合は家族や専門家に相談する
●頻尿/尿漏れ※3
<原因>
大きくなった子宮に膀胱が圧迫されたり、骨盤底筋群という筋肉がゆるんだり、腎臓に流れる血液の量が増える事によって頻尿や尿漏れが起きやすくなりますが、心配で水分摂取を控えると脱水になる危険性もあるので、水分はしっかり摂取しましょう。
<対策>
  • こまめに排泄する
  • 尿吸収ライナーを使用する
  • 意識的に肛門、膣をキュッと締めたり緩ませる運動を行い、骨盤底筋群を鍛える

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●便秘※2
<原因>
ホルモンの影響や大きくなった子宮に圧迫されることで、腸の動きが鈍くなり便秘になりやすくなります。食事や運動で改善しない場合は薬を処方することもできるので、我慢せず医師や助産師に相談しましょう。
<対策>
  • 起床時に冷水や牛乳を1杯飲む
  • 食後に排泄の時間を取る
  • 根菜類や豆類などの野菜や海藻類など繊維質を摂取する
  • 乳酸菌を含む飲料や食べ物を摂取する
  • 納豆やぬか漬けなどの発酵食品を摂取する
  • ウォーキングなどの適度な運動を行う
●こむら返り※2
<原因>
こむら返りは4~6割の妊婦さんが経験すると言われています。姿勢の変化により、下肢への負担が大きくなり乳酸が溜まりやすくなったり、子宮の圧迫により血液の循環が悪くなること、血液中のマグネシウムの減少が原因であると言われています。
症状が辛い場合は漢方を処方してもらえることもあるので医師や助産師に相談しましょう。
<対策>
  • 寝る前にストレッチやマッサージを行う
  • リン酸を含む牛乳などの飲みものや加工食品を取りすぎない
  • こむら返りが起こった際は筋肉を伸ばす
  • 入浴時に下肢を温める
●身体の痒み※2
<原因>
大きくなった子宮が肝臓を圧迫することや、皮膚が急激に引き伸ばされることが原因の1つと言われています。
<対策>
  • 入浴後や着替える時などこまめに保湿する
  • 石鹸やシャンプーは低刺激のものを使用する
  • 身体を洗う際はタオル等を使わず、泡で優しく洗う
  • かき傷を作らないようにする
  • 入浴時の温度が高いと皮膚の油分を落としやすいため、ぬるめに設定する
●めまい/立ちくらみ※2
<原因>
血液の水分量が多くなることによる貧血や自律神経の乱れ、動いた際に血圧が下がることが原因で起こりやすくなります。
<対策>
  • 急に立ち上がったりせず、ゆっくりとした動作を心がける
  • めまいや立ちくらみが起きた場合は頭を打たないよう、すぐその場にしゃがみこむ
  • 回転性のめまいの場合は医師や助産師に相談する

いかがでしたか?妊娠後期に入ると様々な不快症状で悩まされますが、周囲の人に頼りながら対策し、リラックスした時間を過ごせるといいですね。
つらい症状は話すだけでも楽になることもあります。家族はもちろん、病院の医師や助産師にも相談してみてくださいね。

また、気になることはXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

参考文献

※1 胎児計測と胎児発育曲線について ,日本産科婦人科学会周産期委員会,2022/6/3閲覧,
https://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/PUB/ninken/jsog_20111024.pdf

※2 我部山キヨ子,助産学講座6助産診断・技術学Ⅱ[1]妊娠期,医学書院,2013

※3 荻田和秀,最新改訂版らくらくあんしん妊娠・出産,学研プラス,2021


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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