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【助産師執筆】妊娠37週
慌てなくて大丈夫。
破水について正しく知っておこう


ついに妊娠37週に入りましたね。今回も赤ちゃんとママの様子を見ていきましょう。この時期の赤ちゃんの体重は2100~3300g※1です。36週6日までは早産になりますが、37週からは正期産といって赤ちゃんが産まれてくるのに適した時期になります。すべての臓器が完成します※2
お母さんはおなかが張ったり、張った時に痛みを感じたりする時もあるかもしれませんね。陣痛の練習など、心の準備期間と捉えてリラックスして産まれて来る日を待ちましょう。今回は不安に思う方も多い、破水についてお話しします。外出先等で突然の破水をするとびっくりしてしまうかもしれませんが、破水から始まるお産もあります。破水にはいくつかのパターンがあるのでそれぞれの対応について知っておきましょう。

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  • 破水は完全破水と高位破水の2パターンある
  • 破水の時期は人それぞれ
  • 破水した時は慌てず病院に伝えよう
  • 破水後は清潔を保とう

破水ってなに?

破水とは、赤ちゃんを包んでいる卵膜の一部が破れて、羊水が流れ出てくることを言います※3, 4
陣痛やくしゃみなどの腹圧により、子宮の中の圧(子宮内圧)が上昇して破水する場合もあれば、絨毛膜羊膜炎症など、卵膜が感染を起こして膜が弱くなることで破水する場合もあります。
一言で破水といっても、タイミングや卵膜が破れた位置によっていくつかのパターンに分けられます。外出先で破水することもありますので、37週に入ったら、夜用など大きめのナプキンを携帯しておくと安心ですね。

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破水の種類※5

破水の種類は、卵膜が破れた場所によって「完全破水(低位破水)」と「高位破水」に分けられます。

●完全破水(低位破水)
完全破水(低位破水)は、子宮口付近の卵膜が破れ、羊水が流れ出るものをいいます。
内診では児頭(赤ちゃんの頭)に直接触れ、卵膜がない状態です。個人差はありますが、羊水の流れ出る量は高位破水よりも多く、動いている時はもちろん、安静時でも流れ出る感覚があることが多いです。
●高位破水(低位破水)
高位破水は、子宮口から離れた場所で卵膜が破れ、羊水が流れ出るものをいいます。
内診では卵膜に触れる状態です。低位破水よりも流れ出る羊水の量が少ないケースが多く、妊娠後期は尿漏れしやすい時期でもあるので、尿漏れとの判断が難しい場合があります。尿であればアンモニア臭があると思いますが、羊水は生臭いにおいか、無臭が特徴です。その他、尿漏れであれば、尿道口あたりにぎゅっと力を入れれば自分の意志で止められる事もありますが、破水の場合は流れ出る羊水を自分の意志で止められない、といった特徴もあります。
羊水の流れ出る量が少ない場合、判断に迷うというのは多くの方が経験されることです。破水の場合はその後処置が必要になるため、どちらか分からない場合も病院に連絡しましょう。

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破水の時期も個人差がある※5

破水する場所と同じように、タイミングによっても破水の種類は分けられます。

●適時破水
適時破水は、子宮口が全開(10㎝開大)してから破水することをいいます。
経産婦さんは特に、破水したあとすぐに赤ちゃんの頭が降りてきて、出産に至ることもあります。急にいきみたい感じが強くなるので少し不安になるかもしれませんが、もうすぐ赤ちゃんに会えるサインです。医師や助産師のサポートを受けながら頑張りましょうね。
●早期破水
早期破水は、陣痛が始まってから子宮口が全開(10㎝開大)するまでの期間に破水することをいいます。
多くの場合、すでに入院していると思いますので、落ち着いて医師や助産師に伝えましょう。また、破水した時間の情報はママと赤ちゃんの安全を保つためにとても大切です。破水かどうか迷う場合にも、病院のスタッフに伝えましょう。すぐに検査をしてくれるはずです。
●前期破水
前期破水は、陣痛開始前に破水することをいいます。破水後にすぐ陣痛がくる人もいれば、こない人もいます。これは個人差があるので、心配しなくても大丈夫です。外出中に破水した場合は、落ち着いて大きめの清潔なナプキンをあてて家族や病院へ連絡しましょう。この時期は常にナプキンを持ち歩いておくと安心ですね。

破水した!どうしたらいいの?

まずは夜用など大きめで清潔なナプキンをあてましょう。
そして病院や家族に連絡します。破水の場合、そのまま入院となるので、入院できる準備をして病院に向かいましょう。羊水の出る量が多い場合は、車のシートが汚れないように吸水シートやバスタオル、レジャーシート等を敷くと安心ですね。
陣痛タクシーなどでは、防水シートなどを準備していることも多いですが、一般的なタクシーにはありません。自家用車ではなく、タクシーを使う場合には多めにバスタオルを用意しておくと安心です。


破水したら感染にも気を付けよう

妊娠中、子宮の中の赤ちゃんは無菌状態の羊水の中にいます。しかし破水し卵膜が破れる事で外の世界と繋がり、そこから細菌が入って感染する可能性もあります。
感染を防ぐために、こまめに清潔なパッドに交換することが大切です。お風呂に入りたいという方もいらっしゃるかもしれませんが、浴槽やシャワーにも菌がいることがあります。入浴はもちろんシャワーも浴びず、すぐに病院へ行きましょう。
破水していた場合、病院では感染の有無や程度を確認するために、採血を行うことがあります。さらにお産の進み具合にもよりますが、抗生剤の投与を行う事も多いです。
赤ちゃんが感染する可能性があると聞くと不安になってしまう方もいると思いますが、「破水かな?と思ったら入浴せず、清潔なナプキンをあててすぐ病院に行く」これができれば大丈夫です。病院では1人1人の状況に合わせた検査や処置をしていきますので、安心して出産を迎えましょう。


いかがでしたか?外出先での急な破水は驚いてしまうかもしれませんが、破水について知り、適切に対処出来れば怖いものではありません。むしろお産のスタート、赤ちゃんに会えるまでもうすぐです。焦らず落ち着いて、病院に連絡してくださいね。高位破水の場合は、流れ出る羊水が少量で迷うこともあると思います。迷った時は躊躇せずに病院に連絡して、助産師や医師に相談する事が大切です。
また、急を要しない相談はXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

参考文献

※1 胎児計測と胎児発育曲線について, 日本産科婦人科学会周産期委員会,2022/7/5閲覧,
https://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/PUB/ninken/jsog_20111024.pdf

※2 荻田和秀,最新改訂版らくらくあんしん妊娠・出産,学研プラス,2021

※3 株式会社ベビーカレンダー,最新 妊娠・出産オールガイド,新星出版社,2021

※4 破水,eヘルスネット,厚生労働省,2022/7/5閲覧,
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-040.html

※5 我部山キヨ子,助産学講座6 助産診断・技術学Ⅱ[1]妊娠期,医学書院,2013


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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