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【助産師執筆】妊娠26週
これで良い?に答える
助産師が伝えたい妊娠線予防ケアとは


妊娠26週になりましたが、体調はいかがですか?25週ではこむら返りなどマイナートラブル についてお話しました。その他にも、胃が子宮で圧迫される不快感や腰痛なども今の時期は起きやすいですよね。我慢せず、妊婦健診などで病院のスタッフに相談してみてくださいね。

26週頃の赤ちゃん、だいたい体重は640〜1150g程度※1で、嗅覚が発達する頃です。羊水の匂いを嗅いでいた赤ちゃんは、羊水と母乳の匂いの構成が似ているために※2生まれてすぐおっぱいの匂いを嗅ぎ分け、本能的にママのおっぱいを探して吸えるんですよ。
この時期は赤ちゃんの成長が嬉しい一方、おなかが大きくなり下着や肌着もきつくなってきます。自分の身体が変化して戸惑うことは自然なことです。今日はその1つである「妊娠線」についてお話しします。

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  • 妊娠線とは急激な体型の変化によって起こる皮膚のひび割れ
  • 妊娠線が出る場所はおなかだけとは限らない
  • 妊娠線ができる理由は生理的な問題
  • 妊娠線予防には体重管理・食事・保湿のセルフケアが大切

妊娠線とは?

妊娠線とは、急激に体型が変化することで皮膚にできる割れ目のような線のことで、医学的には線状皮膚萎縮症と言われています。出る時期や程度は個人差もあり、初産婦さんで42.8%、経産婦さんで57.4%、日本では妊娠中期までに約80%の方に発生している報告があります。※3 海外でも妊婦の50〜90%に起こると言われています。※4
最初は、光沢のある紅色の状態から現れて、産後は徐々に白っぽく目立ちにくくなります。そして妊娠線は、一度できると完全に消えることはありません。

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妊娠線のできやすい場所は?

妊娠線とよく間違いやすい線があります。それは、妊娠中におへその下から恥骨までまっすぐな線ができる「正中線」です。正中線は、妊娠線とは異なり産後に消えていきます。
今回お話する妊娠線ですが、おなかにできるイメージが強いと思います。実は乳房・大腿部・おしり・二の腕など、広範囲にできるのです。

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妊娠線ができる3つの理由

1.急激な体重増加

皮膚は表皮、真皮、皮下組織の3構造になっています。表皮は伸びやすいですが、その下の真皮・皮下組織に関しては、それほど柔軟性がよくありません。
妊娠中は、おなかだけではなく、胸や下半身もふっくらします。その理由は、皮下組織が脂肪を含みやすい場所のためです。そこで急激な体重増加があると、皮下組織内に脂肪がついて膨らみ、引っ張られるように真皮・表皮が伸びていきます。そして、耐えきれなくなるとひび割れてしまうんです。(図参照) ※5

2.ホルモンの影響

また、妊娠中は副腎皮質ホルモンの分泌が増え、皮膚の弾力を失わせる働きにつながります。そのため、妊娠すると生理的に妊娠線ができやすい状態となり、気をつけたいと思っていても気付いたら出来ていたということが起きます。
さらに、副腎皮質ホルモンはコラーゲンの生成も抑制します。コラーゲンは皮膚に柔軟性をくれる大切な栄養素なので、皮膚の弾力がなくなり、結果的に妊娠線が起こりやすくなるのですね。

3.妊娠の背景

その他にも妊娠の経過やママや赤ちゃんの状況によっても出来やすくなります。

●多胎妊娠
双子以上の赤ちゃんがおなかの中にいると、単胎妊娠よりおなかの表面積が大きく伸ばされます。体重増加のペースも急激に進みやすいためです。
●経産婦さん
一度妊娠・出産を経験していると、子宮や皮膚が伸びやすくなっており、初産婦さんに比べるとおなかが大きくなるスピードが早い傾向にあります。
●乾燥肌の方
乾燥によって皮膚の柔軟性が低くなり、伸びにくいです。アトピー性皮膚炎がある場合は、慢性的な皮膚乾燥によりかゆみも生じる場合もあります。

ところで妊娠線は予防できる…?

妊娠線と聞くと、専用のケアクリームやオイルを使用して予防することが多いですが、妊娠線の予防に有効であると医学的に証明された成分や製品はありません。※4,6今回は予防法として推奨されていることをお伝えしますね。

●体重増加をコントロール

体重が急に増えると妊娠線が出来やすいとお伝えしましたね。だからこそ体重管理は妊娠線予防のためにも大切です。妊娠中は一体どれくらい体重を増やしてもいいのか?みなさんもとても気になりますよね。
実は、これまでの「妊娠中は太りすぎてはいけない」という考えから最近は「これまでより体重を増やして構わない」という指導に変わってきています。これは妊娠14週のコラム『妊娠中はどのくらい動いていいの?妊娠中の活動や運動についてお答えします』でもお伝えしましたね。まずは基本的な考え方をご紹介します。

妊娠中の生活で心がけること

  • 規則正しい生活リズム・食事を心がける
  • なるべく早い時間に夕食を摂る
  • 十分に睡眠時間を確保する
  • 毎日体重計に乗る
  • 適度な運動習慣をつける
まずは階段を使う、散歩する、一駅前で降車して歩く、万歩計をつけるなど、気軽なことから始めてみましょう。あまり神経質になるとストレスを感じます。一緒に生活しているご家族にもよく理解してもらうことが必要です。
特に主治医からの食事制限の指示がない場合には、糖質オフのスイーツなどを選びながら、たまには息抜きをしたり、自分にご褒美を与えたりしてくださいね。

●栄養

妊娠線ができにくい皮膚を作るためには、栄養バランスが大切です。バランスの良い食事を心掛けましょう。※7
なかでも、タンパク質とビタミンCを一緒に摂取することで、コラーゲンが作られます。皮膚の代謝には、多くの栄養素が関係していますので、お肉やお魚、卵、大豆、乳製品などのタンパク質や、いちごやブロッコリーなどビタミンを多く含む野菜が摂れると良いですね。
妊娠25週のコラムではマグネシウムを摂ることで、こむら返りを予防できるお話をしました。妊娠中は色々気を付けることがありますよね。デリバリーやお惣菜を選ぶ時には、必要な栄養素のことを思い出してみてください。

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●保湿

皮膚が乾燥すると表皮の柔軟性が低下し、妊娠したことで皮膚が伸び、妊娠線ができやすくなります。そのため、皮膚の保湿も大切です。普段にお使いのお気に入りのボディクリームでも良いです。保湿クリームは値段や種類も様々ですのでぜひお気に入りのものを見つけてください。
また前述したように、妊娠線は全身どこでもできる可能性があるので、日頃からご自身のボディチェックをすることが大切ですね。保湿をするタイミングは、お風呂上がりがベストです。お湯が皮膚の水分を奪って蒸発しますので、できるだけスムーズに保湿すると良いでしょう。


今回のコラムはいかがでしたか?妊娠線は、嫌なものというイメージもありますが、赤ちゃんがおなかで成長している証であり、生理的なものです。同時に、ママが綺麗な肌を保ちたいと思うことも素敵なことです。
赤ちゃんや、ママの体調を第一にして、今回の内容を参考にできる範囲で妊娠線ケアを心掛けてみて下さい。

不安なことや気になることは、Xで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

参考文献

※1 胎児計測と胎児発育曲線について,日本産科婦人科学会周産期委員会,2022/03/17閲覧,
https://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/PUB/ninken/jsog_20111024.pdf

※2 坂井信之,長谷川智子, 今田純雄,人はなぜ食べるのか(4):発達初期における風味嗜好とその形成(Mennella and Beauchamp,1996より),広島修大論集,人文編40巻1号,1999/09/30,329-362,
https://shudo-u.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=645&item_no=1&page_id=13&block_id=62

※3  山口琴美,妊娠線予防確立に向けた標準的妊娠線評価基準の作成と発生機序の解明,科学研究費助成事業 研究成果報告書,2022/03/17閲覧,
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-25862187/25862187seika.pdf

※4 Uwe Wollina ,Alberto Goldman,,Management of stretch marks (with a focus on striae rubrae),Journal of Cutaneous and Aesthetic Surgery 10(3):124-129,2017
https://www.researchgate.net/publication/322099684_Management_of_stretch_marks_with_a_focus_on_striae_rubrae

※5 線状皮膚萎縮症,Wikipedia,2022/03/17閲覧,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%9A%E7%8A%B6%E7%9A%AE%E8%86%9A%E8%90%8E%E7%B8%AE%E7%97%87

※6 妊娠での妊娠線予防に対する局所用剤,Cochrane,2022/03/17閲覧,
https://www.cochrane.org/ja/CD000066/PREG_ren-shen-denoren-shen-xian-yu-fang-nidui-suruju-suo-yong-ji

※7 妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくりを~,国立健康・栄養研究所,国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所,2022/03/17閲覧,
https://www.nibiohn.go.jp/eiken/ninsanpu/index.html


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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