
本調査の要旨:1万人調査「子育てしやすい街リポート」から見えたこと
「支援の数」だけでは測れない、子育てしやすい街の実態


現在子育て中の方、約1万人の声から見えてきたのは、支援の数だけでは語れない、「子育てしやすい街」の姿でした。
「子育てしやすさ」を左右しているのは、いったい何なのでしょうか。
今回のアンケート調査で収集した数字データから見えるものと、寄せられたリアルな声から見えるものから、その理由をたどっていきます。
そして、このリポートから見えたことを元に、赤ちゃん本舗は新たな取り組み「子育て支援meetsプロジェクト」を始めます。
子育てする人とサポートする人をつなぐ取り組み「子育て支援meetsプロジェクト」
自治体の皆さまへ:「各自治体の詳細レポート」をご提出します
詳細を見る
1万人調査「子育てしやすい街リポート」で寄せられた子育て世帯の声を「詳細レポート」にまとめ、自治体の皆さまにご提供いたします。(下記画像はイメージです。内容は変更になる可能性があります)
自治体の皆さま:「各自治体の詳細レポート」のお申し込みはこちら
※上記申し込みフォームには、必ず各行政機関で使用されているメールアドレスをご入力お願いします。フリーアドレスの利用等、ご担当者さまであることが確認できない場合はお送りいたしかねる場合がございます。
※弊社からのレポートご提出は、2025年12月上旬から順次対応いたします。

「子育てしやすさ」はどこにある?
子育て世帯 約1万人に聞いたリアルな声
子育てには、日頃のお世話に加えて、成長を考えたふれあい・遊び、健康管理、保育所探し、仕事との両立など、やるべきことがたくさんあります。
子育てに関する行政の制度や支援が整いつつある今も、「実際のところ、自分の地域は子育てしやすいのだろうか?」と感じる方は少なくありません。
子育て世帯の「リアルな声」を集めるために、全国のアカチャンホンポ会員を対象にアンケートを実施し、約1万件の回答が集まりました。お住まいの地域について「子育てがしやすい」と感じる度合いを100点満点で評価してもらい、その平均点をもとに「子育て満足度」上位100自治体のランキングを作成しています。
また、本リポートにおける「子育てしやすさ」は、「子育て満足度」の点数が高い自治体の「満足の理由(自由記述)」、「子育てに関連する18の項目のうち満足していると回答されたもの(複数選択式)」を元に分析した内容から考察したものです。
【調査概要】(タップ・クリックすると開きます)
- 調査名 : 子育て満足度ランキング調査
- 調査対象: アカチャンホンポ会員
- 回答者数: 10,837名
- 調査方法: アカチャンホンポアプリによるアンケート調査
- 調査期間: 2025/8/17(日)~9/9(火)
- 調査機関: 株式会社赤ちゃん本舗
- 質問項目:
- お住まいの都道府県
- お住まいの市区町村(例:大阪市北区)
- お住まいの自治体(市区町村)での子育て満足度(100点満点)とその理由(自由回答)
- お住まいの自治体(市区町村)での子育て満足度(6段階)
- 希望する改善点(自由回答)
- 満足している項目と改善を希望する項目(以下の18項目から選択式)
18項目の詳細
- 金銭的支援
- 助成・補助(例:ワクチン接種、購入補助)
- 給付金・一時金(例:お祝い金)
- 特典・割引(例:子育て支援パスポート)
- 施設環境
- 行政施設(児童館、公園、交流センター)
- 支援施設(保健センター、療育センター)
- 商業施設
- 医療施設(小児科・産婦人科等)
- 子育て施設(遊び場、習い事、民間療育等)
- 金銭的支援
- 生活環境
- 治安・安全性(防犯、防災、交通等)
- 周辺環境(静かさ、自然の豊かさ等)
- 移動時の利便性(バリアフリー、駐車場等)
- 日常の生活支援
- 行政の子育て情報・相談(アプリ・窓口等)
- 専門職によるアドバイス等の心理的サポート
- 日常のサポート(ファミサポ、一時預かり)
- ケガ・病気の対応(夜間・救急、病児保育)
- プログラム(両親学級、離乳食講座等)
- 交流イベント(親子参加、子育てサークル)
- 周辺住民との関係(子どもに対する寛容性等)
【本調査における留意点】
本調査は、当社アプリ会員を対象として実施したものです。
当社は地域ごとに出店状況が異なるため、地域によって回答数には差が生じており、一部自治体にお住まいの方の回答数が少ない、または回答が得られていない場合がございます。
そのため、本結果は全都道府県を均等に網羅したものではない点をあらかじめご了承ください。
ランキングは回答数が20件以上の自治体(135自治体)を対象に平均点を算出し、得点の高い順に掲載しています。小数点以下第一位を四捨五入しています。
掲載しているコメントは、回答の一部を抜粋したものです。
また、本リポートにおける「子育てしやすさ」は、「子育て満足度」の点数が高い自治体の「満足の理由(自由記述)」、「子育てに関連する18の項目のうち満足していると回答されたもの(複数選択式)」を元に分析した内容から考察したものです。

- 【はじめに】本調査の要旨:1万人調査「子育てしやすい街リポート」から見えたこと
- 1. 子育て満足度 上位100自治体のランキング
- 2. 子育てしやすさとは?
- 3.1万人調査に寄せられた声
- 3-1. 子育て満足度1位の安城市
- 3-2. 室内遊び場の需要と時代に合わせた対応
- 3-3. 満足度の高い自治体が抱える待機児童問題
- 3-4. 情報格差をなくして「支援を受け取れる」体制づくり
- 3-5. その他の「子育て世帯のリアルな声」
- 4. 子育て満足度を育てる街の工夫
- 4-1. 切れ目のない支援とは:福岡市の取り組みから
- 4-2. 「できる範囲の支援」が満足度向上へ:東京都23区の分析から
- 4-3. 「隣の芝生は青い?」独自の支援の必要性:他自治体との比較コメントから
- 5. まとめ
- 6. 子育て支援meetsプロジェクト
1. 子育て満足度 上位100自治体のランキング
ランキングは回答数が20件以上の自治体(135自治体)を対象に平均点を算出し、得点の高い順に掲載しています。小数点以下第一位を四捨五入しています。

10位台~
| 順位 | 自治体名 | 平均点 |
|---|---|---|
| 11位 | 福岡市(福岡県) | 78 点 |
| 12位 | 高槻市(大阪府) 府中市(東京都) | 77 点 |
| 14位 | 宇都宮市(栃木県) 中央区(東京都) | 76 点 |
| 16位 | 豊田市(愛知県) 墨田区(東京都) 板橋区(東京都) 防府市(山口県) 練馬区(東京都) 北九州市(福岡県) | 75 点 |
| 22位 | 大田区(東京都) 西東京市(東京都) 足立区(東京都) 磐田市(静岡県) 立川市(東京都) | 74 点 |
| 27位 | 名古屋市(愛知県) 吹田市(大阪府) 北区(東京都) 町田市(東京都) 日野市(東京都) 刈谷市(愛知県) 神戸市(兵庫県) 伊丹市(兵庫県) 福井市(福井県) 春日井市(愛知県) | 73 点 |
30位台~
| 順位 | 自治体名 | 平均点 |
|---|---|---|
| 37位 | 坂井市(福井県) 高松市(香川県) 八王子市(東京都) 松本市(長野県) 松戸市(千葉県) 台東区(東京都) 豊島区(東京都) 草津市(滋賀県) | 72 点 |
| 45位 | 大和市(神奈川県) 藤沢市(神奈川県) 佐賀市(佐賀県) 豊中市(大阪府) 世田谷区(東京都) 那覇市(沖縄県) 高崎市(群馬県) 日進市(愛知県) 茨木市(大阪府) 小金井市(東京都) 栗東市(滋賀県) | 71 点 |
| 56位 | 寝屋川市(大阪府) 所沢市(埼玉県) 堺市(大阪府) 東村山市(東京都) 大野城市(福岡県) | 70 点 |
60位台~
| 順位 | 自治体名 | 平均点 |
|---|---|---|
| 61位 | 飯塚市(福岡県) 平塚市(神奈川県) 熊本市(熊本県) 加古川市(兵庫県) 稲沢市(愛知県) 西宮市(兵庫県) 習志野市(千葉県) 姫路市(兵庫県) | 69 点 |
| 69位 | 松山市(愛媛県) 郡山市(福島県) 枚方市(大阪府) 杉並区(東京都) 春日部市(埼玉県) 和歌山市(和歌山県) 大阪市(大阪府) 富山市(富山県) 宇治市(京都府) 越谷市(埼玉県) 一宮市(愛知県) 青森市(青森県) | 68 点 |
80位台~
| 順位 | 自治体名 | 点数 |
|---|---|---|
| 81位 | つくば市(茨城県) 市川市(千葉県) 金沢市(石川県) 八尾市(大阪府) 静岡市(静岡県) 長岡市(新潟県) 流山市(千葉県) 市原市(千葉県) 奈良市(奈良県) 上尾市(埼玉県) | 67点 |
| 91位 | さいたま市(埼玉県) 和光市(埼玉県) 出雲市(島根県) 三郷市(埼玉県) 札幌市(北海道) 柏市(千葉県) 大分市(大分県) 熊谷市(埼玉県) 東久留米市(東京都) 上田市(長野県) 海老名市(神奈川県) 目黒区(東京都) 福山市(広島県) | 66点 |

2.子育てしやすさとは?
2-1.数字を読み解く:子育てしやすい街の要因
今回のアンケートでは、子育て満足度に影響すると考えられる18の具体的な項目について、それぞれ「満足しているもの(80点以上をつけてもよいもの)」と「改善してほしいもの」を複数選択式で回答してもらいました。
これらの18項目を、「金銭的支援」「日常の生活支援」「地域社会」「施設環境」「生活環境」の5つの分類に整理し、子育て世帯がどのような点に満足し、どの部分に課題を感じているのかを分析しました。
5つの分類と18の項目
- 金銭的支援
- 助成・補助(例:ワクチン接種、購入補助)
- 給付金・一時金(例:お祝い金)
- 特典・割引(例:子育て支援パスポート)
- 行政施設(児童館、公園、交流センター)
- 支援施設(保健センター、療育センター)
- 商業施設
- 医療施設(小児科・産婦人科等)
- 子育て施設(遊び場、習い事、民間療育等)
- 治安・安全性(防犯、防災、交通等)
- 周辺環境(静かさ、自然の豊かさ等)
- 移動時の利便性(バリアフリー、駐車場等)
- 行政の子育て情報・相談(アプリ・窓口等)
- 専門職によるアドバイス等の心理的サポート
- 日常のサポート(ファミサポ、一時預かり)
- ケガ・病気の対応(夜間・救急、病児保育)
- プログラム(両親学級、離乳食講座等)
- 交流イベント(親子参加、子育てサークル)
- 周辺住民との関係(子供に対する寛容性等)
まずは、全回答者10,837名のうち、18の項目について「満足している」「改善してほしい」と回答した方の割合を算出して作成した「子育て満足チャート」「子育て改善チャート」から、今の日本で子育てをする家庭がどんなことを感じているのか、その全体像を見ていきます。
全体の「満足・改善」の傾向

このチャートで注目したいのは、満足度が高い項目と、改善を望む項目の分布がよく似ている点です。
そして、「子育て改善チャート」の方が全体的に一回り外側に広がっており、“もう少し良くなればいいのに”という期待の高さが感じられます。
この傾向から読み取れるのは、支援が評価されている一方で、同じ分野に“さらに良くしてほしい”という期待が同時に存在しているということです。
たとえば、金銭的支援については、実施している自治体と、まったく行っていない自治体が同じくらいある、という状況ではないと考えられます。
それでも満足と改善の割合が近い形になるのは、支援の「有無」だけでは説明しきれない、ほかの要素が影響している可能性があると考えられます。
さらに詳しく見てみると、子育て世帯において満足・改善の両面で最も関心が高いのは「金銭的支援」です。
専門職によるアドバイスやファミサポ・一時預かりなどの「日常の生活支援」や、児童館、保健センター、商業施設、医療施設などの「施設環境」では、満足よりも改善を求める声が目立ちます。自治体は、利用のしやすさやサービスの質など、どこに課題があるのかを見ていく必要があるのではないでしょうか?
「地域社会」や「生活環境」については、満足と改善がほぼ同程度か、むしろ満足のほうがが上回っています。子育て世帯は、それぞれの地域の暮らしやすさを実感しているように見受けられます。
では次に、この「子育て満足度チャート」が自治体ごとにどのような特徴を示しているのか、見ていきましょう。
同じ点数の自治体でも、どこに「満足」しているのかは異なる

上のチャートは、満足度ランキングで同点となった2つの自治体の「子育て満足度チャート」です。どちらも高い評価を得ている街ですが、チャートの輪郭を比べると、それぞれの特徴が異なることがわかります。
A市は「金銭的支援」が突出して評価されており、その高さが満足度を押し上げていました。
一方でB市は、「施設環境」や「生活環境」といった、子育てを取り巻く環境そのものへの評価が高く、それが満足度につながっていることがわかります。
このように、満足度の高い自治体であっても、評価の軸は地域によって大きく異なります。
人口構成や立地条件(都心・地方)、さらには気候や地域文化など、自治体が置かれている環境は実にさまざまです。
そのため、全国一律の「満足度の上げ方」が存在するわけではなく、他の自治体の施策をそのまま導入しても、必ずしも同様の成果が得られるとは限りません。
つまり、各自治体が自らの地域に合った方法で、「その街らしい満足の形」を築いていくことが重要と考えられるのではないでしょうか。
この次は、今回の子育て満足度ランキングで1位に輝いた安城市(愛知県)のチャートを見ていきましょう。
ランキング1位に輝いた安城市の傾向

緑の実線が安城市、点線が回答者全体の平均を示しています。
まず「子育て満足チャート」に注目すると、安城市は全体平均のチャートよりも全体的に外側へ広がっており、5つの分類すべてで「満足」と回答した人の割合が平均を上回っています。
この結果から、安城市の子育て環境そのものが全国的に見ても高い水準にあることがわかります。

一方、「子育て改善チャート」を見ると、すべての指標で全体平均を下回っています。これは、“満足度が高いからこそ、改善を求める項目が少ない”という市民の声が表れていると言えるのではないでしょうか。
さらには「地域社会」と「施設環境」で特に高い評価を得ており、いずれも全体平均の2倍以上という高い満足度を記録しています。
安城市は各項目の満足度・改善希望度を見ても、非常に子育て満足度の高い自治体であることが示されている、と言えるでしょう。
安城市の18項目を分析
ここからは、5つの分類に整理していた「子育て満足度に影響すると思われる18の項目」を詳細に見ていき、安城市が高く評価されたポイントをより細かく読み解いていきましょう。
市民がどのような点に「満足」を感じているのか、その要因を探ります。





18の項目の中で、安城市が全体平均を下回ったのは、「金銭的支援」の中の「特典・割引」でした。
この分野をさらに充実させることで、今後の満足度向上に向けた新たな可能性が見えてきます。
一方で、施設や地域、情報発信など複数の分野でバランスよく満足度を高めることが、自治体全体の評価向上につながることも分かりました。
「施設環境」ではとくに行政施設の利便性や快適さへの評価が高く、「地域社会」では交流イベントに対する満足度が際立っています。
さらに、「日常の生活支援」に含まれる行政の子育て情報・相談も、全体平均を大きく上回る評価を得ています。
これらの結果から、安城市の強みは、「ひとつの施策だけでなく複数の取り組みがうまく連携し合っている点」にあると推察することができます。
たとえば、行政施設を活用した交流イベントが行われ、その情報が行政の発信によって市民にしっかりと届き利用されている。こうした好循環が、安城市の子育て満足度を支える大きな要因の一つになっているのでないかと考えられます。
18の項目を詳細に見ていくことで、項目同士の連携性や、各自治体が持つ強み・今後の可能性がより明確になります。
ここまでは、数値やグラフをもとに「子育てしやすい街」の姿を探ってきました。
分析の結果からは、満足度の構成は自治体ごとに異なり、それぞれの地域の状況や取り組みに応じた特徴が見られます。
次のパートでは、アンケートに寄せられた子育て世帯の声に焦点を当て、数字だけでは捉えきれないリアルな思いや暮らしの実情をたどっていきます。
2-2.約1万人の声を読み解く:子育てしやすさの判断ポイントは?
今回の調査で寄せられた約1万件のコメントには、”この支援があって本当に助かった!”という前向きな声も、”ここをもう少し良くしてほしい”という率直な声もありました。
その一つひとつを読み解きながら、子育て世帯が 「どこに子育てのしやすさを感じているのか」 を探ってみました。そこで気づいたのは、保育や支援制度だけではなく、遊び場のあり方や移動のしやすさ、地域の人との関わりなど、日々の暮らしの色々なところに「子育てしやすい・しにくい」が生まれているということでした。
コメント内容の11分類
- 子育て支援・サポート制度
- 遊び・交流・施設環境
- 待機児童問題
- 経済的支援・負担
- 医療・福祉サービス
- 交通・生活利便性
- 保育・幼児教育
- 行政・自治体対応
- 地域コミュニティ・人間関係
- 安全・治安
- その他
満足・改善要望を問わず、「子育て世帯が関心を寄せているトピックス」を可視化したのが、下の図です。

ここからは、関心の高いテーマ順に、子育て世帯のリアルな声を紐解いていきます。

3.1万人調査に寄せられた声
以下でご紹介するコメントは、回答の一部を抜粋したものです。
3-1.子育て満足度1位の安城市
トピックス1:子育て支援・サポート
全体のコメントのうち、最も多かったのが「子育て支援・サポート」に関する声(33.7%)でした。
”この支援が助かった”、”サポート制度が充実していて安心”など、具体的なサービス名を挙げて感謝する声が多く寄せられました。
”支援の数が多くてありがたい”といった支援の量への満足の他にも、"この支援がほしい"、"もっとサポートを増やしてほしい”といった、改善を求める声もありました。
しかし、注目したいのは支援そのものの多い・少ないだけではありません。子育て満足度1位に選ばれた安城市(愛知県)に寄せられたコメントを見てみると、満足度が高い理由は、他にもあることが見えてきます。
公園や支援センター、児童センターなど子どもが遊べる場所が多い。また保育園も第二子無料だったり、3歳以上保育料無償化もあり子育てしやすい雰囲気なのが良い。
公立保育園内に支援センターがあり、市の施設ではあるものの月曜も利用できるため大変ありがたい。
子育てしやすい街の雰囲気や、サービスを提供する場所など、ニーズに合わせた支援の届け方が影響しているようです。
たとえば、”子育てしやすい雰囲気が良い”というコメントからは、行政の思いや姿勢が市民にしっかり伝わっていることが感じられます。
また、”公立保育園内に支援センターがある”、自治体が運営する施設は月曜日休館となることが多いですが”月曜も利用できる”といった声には、施設の立地やサービスを利用できるタイミングの工夫など、「支援を届ける仕組み」への評価が見て取れます。
さらに、安城市にはこうした具体的な声のほかにも、”子育てに力を入れている”、”子育て支援が整っている”、”全てにおいて充実していて満足”といったコメントが多く寄せられました。
詳しい制度名までは挙げられていないものの、行政の取り組みや思いが確かに子育て世帯に伝わっていることがわかります。行政の取り組みや思いが子育て世帯に届けば、自然と自治体への愛着も生まれてくるでしょう。
安城市と同じように多くの支援制度を持つ自治体は全国にいくつもあり、中には安城市以上に多彩な支援を提供している自治体もあるかもしれません。
それでも安城市が選ばれたのは、「支援が市民にきちんと届いているか」「その思いが伝わっているか」という点が関係していると考えられます。
支援の数だけでなく、「伝え方」を工夫して子育て世帯の心に残るサポートにしていくこと、それによって「自治体への愛着」を持ってもらうことも、子育て満足度の向上には欠かせない要素なのかもしれません。
3-2.室内遊び場の需要と時代に合わせた対応
トピックス2:遊び・交流・施設環境
2つ目は、「遊び・交流・施設環境」。全体のコメントのうち、17.2%がこのテーマに関する内容でした。ランキング上位に選ばれた自治体には、子どもと安心して遊べる環境や、親子が自然に集える場への満足の声が多く寄せられました。
まだ娘が0歳なのでハイハイでも遊べるところが多く、オムツも用意されている所もあり出かけやすいです。
自宅近くにセンターがあり、自宅保育ですが、そこで相談できる友人も作れました。今の市に引っ越してきたからだと思ってます。
一方で、ランキング上位・下位どちらの自治体にも共通して「室内の遊び場」の充実を求めるコメントが多く見られました。
全国的な話ではありますが、暑い時期の子どもの遊び場が不足しています。季節に応じてでも良いので、市の体育館等を低価格で気軽に開放してほしいと感じます。思いっきり走らせてあげたい。
近くに何ヵ所か公園はあるけど、室内で遊べる所が1ヵ所しかないので猛暑や悪天候の時はすごく混み合って利用しづらい。
近年の暑すぎる夏が、この結果に影響していると考えられます。
気候の変化により、屋外で思いきり遊べる時間が限られてきたことで、「涼しく、安全に過ごせる室内の遊び場」が求められるようになっているのです。
こども家庭庁の「こどもまんなか実行計画」にも記載があるとおり、行政はこれまで「子どもの遊び場の確保や地域交流を目的とした都市公園の整備」に力を入れてきました。
しかし、暑い夏だけではなく、雨の日や、雪が積もる寒い日など、外で遊べない日は意外と多いものです。子育て世帯の暮らしに寄り添うためには、屋内で遊べる施設づくりや季節・気候に左右されない交流の場の提供なども、必要性が高まっているのではないでしょうか?
遊び場に限らず、さまざまな変化を的確にキャッチして、そのニーズに応えていくことが、自治体に対する満足度をさらに高める鍵となりそうです。
3-3.子育て満足度の高い自治体が抱える「待機児童問題」
トピックス3:待機児童問題
3つ目は、「待機児童」。全体のコメントのうち、10.2%がこのテーマに関する内容でした。 しかし、注目すべきは“待機児童数”だけではありません。
保育所に申し込んでも入所できず、やむを得ず育休を延長したり、自宅での保育を続けたりしている家庭も少なくありません。こうした子どもたちは「保留児童」と呼ばれ、待機児童の統計には含まれないため、いわゆる「隠れ待機児童」として実態が見えにくいのが現状です。
調査では、この「待機児童」「保留児童」に関して、実際の体験に基づいたリアルな声が多く寄せられました。
子育て支援サポートはあるが、保育所の待機児童が多く入園できず働きたくても働けないため
保育園の待機児童問題は解決しているように見えるが、あくまで0歳児のみ。
また、保育所に入所できたとしても、きょうだいが別のところに通っていたり、自宅から遠いところを選ばざるを得なかったりと、希望どおりの保育を受けられないケースも少なくありません。
(子ども2人の入所で)上の子の空きがなく、仕方なく幼稚園の4年制に入れた。お金がかかり預かり時間も少ない
保育園の待機児童が少なくなっていると言われているが、自宅近くに空きはなく、遠い保育園に通わせなければいけない事がつらい。
この「待機児童」や「保留児童」に関するコメントは、意外にもランキング上位の自治体から多く寄せられていました。
その背景には、「人気自治体の副作用」とも言える現象があります。”子育てしやすい街だから”と転入する家庭が増え、子どもの人口が急速に増加。それに対して保育所などのインフラ整備が追いつかず、結果的に順番待ちやキャンセル待ちが発生し、満足度が下がってしまうという構図です。
これからの子育て支援は、特定の自治体だけが突出して評価される形ではなく、全国の自治体がそれぞれに「子育てのしやすさ」を追求していくことが求められています。
地域格差解消に取り組み、全国的に子育てしやすい環境を底上げしていくことが、子育て世帯の満足度向上につながっていくのではないでしょうか。
3-4.情報格差をなくして「支援を受け取れる」体制づくり
トピックス4:経済的支援・負担
4つ目は、「経済的支援・負担」。全体のコメント7% が、経済的支援や負担軽減に関するものでした。日々の生活に必要な物品、健康管理のための費用、家族での思い出作りなど、子どもとの生活にかかる費用を考えると”少しでも経済的な支援があると助かる”と感じるのは自然なことでしょう。
ランキング上位の自治体では、コメント内に補助金や給付金の名称を具体的に挙げるケースが目立ちました。
ベビーシッターや産後ドゥーラの補助、保育無償、給食無償、医療費無償、出産応援ギフト、オムツ定期便などなど制度が充実している。
ホームヘルパーやドゥーラ助成がある。産後ケアの施設の利用料の補助が大きい。
産後ドゥーラとは、産前産後の知識と技術を身につけ、一般社団法人ドゥーラ協会の認定を受けた専門家です。
自宅に訪問して家事のサポートや沐浴の援助、検診の付き添い、子育て相談など、産後のママと家族を支えるサービスを提供します。
こうしたコメントからは、支援が豊富なことはもちろん、「利用者がそれだけ多くの支援を知り、実際に活用できている」という点にも、その自治体の特徴が表れています。支援がきちんと届いていることが、自治体の取り組みの成果ともいえるでしょう。
一方で、支援が整っていても、それがうまく届かないケースもあります。
支援の内容そのものだけでなく、「手続きのしやすさ」や「情報がきちんと届いているか」といった、「利用につながる仕組み」も重要なポイントです。ランキング下位の自治体ほど、”知っていればもらえたのに”、”手続きの期限を過ぎてギリギリもらえなかった”といったコメントが見受けられました。
知っていれば様々な支援があるが、知らないと損することもあるような印象。
産後のケア施設などがあったらしいが、全然その情報がなくて後から知ってとても残念に感じた。
第二子の妊娠届を出した期間がぎりぎり助成対象外であり、悲しかった。
支援がわかりやすく提示してあると嬉しい。
補助金や給付金などの制度は、知っていれば得、知らなければ損。この「情報格差」が満足度を左右しやすい領域です。さらに”損をした”という実感は、満足度の低下につながります。
もちろん、わかりやすい情報発信によって、子育て世帯の満足度を高めている自治体もあります。
月齢に合わせた子育て情報がアプリを通じて通知されて確認しやすい。
区のホームページに、手続きや手当に関する情報が分かりやすくまとまっている。
今後は、支援の数や金額の拡充だけでなく、「どう伝えるか」「どこで情報を伝えるか」 という情報提供の整備が欠かせません。
せっかく多くの支援を用意しても、それが届かずに満足度を下げてしまうのは、あまりにももったいないことです。
3-5.その他の「子育て世帯のリアルな声」
手続きの困難さ
産後ケアの手続がとても面倒だった。産後体力的にしんどい時期に利用したいのに、役所の窓口でしか申請できず、利用許可が下りるのにも時間がかかった。
共働き世帯では利用しにくい支援
産前に受けるパパママ教室ですが、共働き世帯の多い地域なのに土日の受講が月2日しかなく、抽選式で外れました。タイミングも32週と37週の2回だけしかなかったため、かなり不便な印象です。
双子育児での課題
一時預かりなど、双子を同時に預かって欲しいと思う時も抽選で決まるため、確実に2人同時に預かってもらえる確率が低いため予定が立てにくい。その点を改善してほしい。
地域特性とのミスマッチ
車社会の地域なのに、保健センターや遊び場が有料駐車場なのは行きづらい。
安定的な利用が難しい支援
病児保育施設を増やしてほしい。基本的にキャンセル待ちで利用できるかどうかも当日ギリギリにならないと分からない。利用したい時に利用できないのは困る。
支援のお試し利用でもっと使いやすく
一時預かりやファミリーサポートのお試しみたいなことをやってほしい。こういう事がやれますよ、こういった預かりをしますよと体験出来ると使いやすい。
支援の制度や取り組みがあっても、利用のしやすさや地域の特徴との相性、そして家庭の状況にどれだけ寄り添えているかによって、実際の満足度は大きく変わります。
「制度があること」だけでは十分ではなく、子育て世帯に「どう届くか」「どんな体験として受け取られるか」が、とても大切なポイントです。
共働き世帯の増加など、ライフスタイルの変化が進む中で、実際に利用する人の目線に立った、柔軟な支援のあり方がこれから一層求められます。

4.子育て満足度を育てる街の工夫
4-1.切れ目のない支援とは:
福岡市の取り組みから
今回のコメント分析の中で新たに見えてきたのは、子育て世帯への「切れ目のない支援とは何か」という視点の重要性です。
多くのコメントから、助産師の訪問やおむつの定期便など、産後すぐのサポートが「1歳の誕生日」を境に終了するケースが多いことが分かりました。
産後ケアのような簡単に相談できるようなものが1歳以降にもあると嬉しい。
自治体からの支援が1歳を過ぎると無くなってくる。
このタイミングで支援が終わることにより、”相談できる機会が減った”、”サポートが終わってしまったように感じた”という声が少なくありませんでした。
しかし、1歳前後といえば、歩き始めるかどうかという時期。離乳食は完了期に向かい、夜泣きや卒乳、イヤイヤ期の前触れなど、まだまだ変化が多く、親としての悩みも尽きません。
そんな時期こそ“まだ支援があれば…”と感じる子育て世帯は多いのではないでしょうか。
そこで注目したいのが、福岡市の「おむつと安心定期便」です。
この制度は、子どもが3歳の誕生日を迎えるまで、毎月おむつなどの育児用品を自宅に届けるというもの。
さらに、配送時には保健師や助産師などの専門職による育児相談の案内や情報提供もセットで行われるなど、「物の支援」と「心の支援」を組み合わせたハイブリッド型のサポートが特徴です。
福岡市の「おむつと安心定期便」とは?
✅ 事業概要
開始:2023年8月からスタートした事業
対象:福岡市内に住む、0歳~3歳の誕生月までのお子さまを育てるご家庭
仕組み:子育て関連施設・サービスの利用またはアンケート回答によって電子スタンプを取得 → スタンプ1個につき育児用品と交換可能 → 自宅に配送
支援品の例:おむつ・おしりふき・離乳食・粉ミルク・スキンケア用品など、約200種類の育児用品から選択可能
📋 利用の流れ
生後3ヵ月まで:専用サイトのアンケート回答で受け取り
生後3ヵ月〜3歳誕生月まで:子育て関連施設やサービスを利用して二次元コードの読み取りや利用実績でスタンプ付与。スタンプ1個につき育児用品と交換申請 → 商品を自宅に配送。
※電子スタンプの受け取りは毎月1回まで。電子スタンプの有効期限はスタンプ取得月の翌々月末まで。
子育て関連施設・サービスの利用やアンケート回答など、条件を満たせば取得できる電子スタンプと交換で、おむつや育児用品を定期的に受け取れる仕組みで、子どもの月齢や状況に応じて柔軟に選べるのも特徴です。
経済的負担の軽減はもちろん、”いつでも相談できる環境が身近にある”という安心感が、子育て世帯の心を支えています。
こうした取り組みは、子どもが園に通うようになる前の時期にも孤立せずに相談できる場をつなげられるもので、まさに「切れ目のない支援」の好例といえるでしょう。
自治体によって支援の形はさまざまですが、「切れ目を作らないために、どうするか」という視点で制度設計を見直すことが、子育て世帯の満足度を大きく左右する鍵になるかもしれません。
4-2.「できる範囲の支援」が満足度向上へ:
東京都23区の分析から
多様な子育て支援が満足度を押し上げる
今回の調査で、ランキング上位10位中5自治体を東京都23区が占めました。
東京都は、18歳までの医療費無料や0~2歳の第一子からの保育料無償化、赤ちゃんファーストギフト、誕生日カタログギフト、産後ケアや応援パスポートなど、全国でも先進的な施策を実施しています。
中でも注目されたのが「おむつ関連支援制度」です。おむつを毎月家庭へ届ける「オムツ定期便」と、保育施設でおむつの持参が不要になる「オムツサブスク」があり、港区と品川区は両方を導入して東京都23区の中では満足度第1位(全体のランキングでは2位)となりました。江戸川区は定期便のみですが高評価を得ており、より多くの家庭が恩恵を受ける仕組みが満足度向上に直結していることがうかがえます。
一方で、おむつ支援を行っていない葛飾区が東京都23区の第4位(全体のランキングでは6位)に入った点も特徴的です。同区では「ベビーカー・抱っこ紐助成事業」を実施し、購入・レンタル費用を最大1.5万円まで助成。ヒップシートも対象に含めるなど、利用者のニーズを丁寧に拾い上げています。周知のためのPRも積極的で、”区独自の助成制度が多くある”との声が寄せられました。
葛飾区のような、家庭の多様な状況に寄り添う独自の施策は、しっかりと子育て世帯に届いています。

各区の人口は、2025年10月時点のものです。
(それぞれ区のホームページより引用:港区、品川区、江戸川区、葛飾区、江東区、中央区)
東京都23区に限らず、「自治体がどのくらい子育て支援に取り組もうとしているか」に注目している子育て世帯は少なくありません。
子育てしやすい街づくりをしているのは伝わります。実際に子どもを育ててみて、赤ちゃんの駅や子育てサロンなど色んな場所にあり、よく利用させてもらっています。
市独自の出産時の給付金がわずかであったが、出たので子育て世帯を支援するのは伝わった。
自治体によって財政や人口構成等の状況は異なりますが、その中で最大限の支援があると感じられること、子育て世帯のニーズに沿った支援であることが、満足度の向上につながるようです。
4-3.「隣の芝生は青い?」独自の支援の必要性:
他自治体との比較コメントから
「隣の芝生」が気になる理由――わが街の子育て満足度を考える
アンケートの記述欄には、”隣の市は”、”〇〇市のように”、”〇〇市と比べて”といった、他の自治体との比較コメントが多く寄せられました。
自分の街が他より良いから満足、劣っているから不満。意見の方向は違っても、どちらにも共通しているのは「他の街と比べながら、自分の暮らしを見つめている」という点です。
今の子育て世帯は、情報を得る機会が豊富です。SNSやニュース、友人との会話など、日常のあらゆる場面で他の自治体の取り組みを知ることができます。
「隣の市はおむつが無料でもらえるんだって」「うちの市は医療費がかからないよ」といったやり取りは、身近な話題としてよくあがります。実際、全体の2割を超える方が他市との比較をコメントに書いており、「他と比べてどうか」が満足度に影響していることがわかります。
中でも目立ったのは、”東京都のように”、”東京都と比べたら”という声です。特に千葉県・埼玉県・神奈川県といった東京都近郊では、支援内容を身近に比較できるだけに、その差が気になりやすいことがわかります。
しかし、自治体ごとに財政状況や人口構成は異なり、同じ施策をすぐに導入できるわけではありません。
理解はしていても、「隣の街では支援がもっと充実している」と聞けば、羨ましく感じてしまう気持ちは自然なことです。まさに「隣の芝生は青く見える」というわけです。
では、どうすれば子育て満足度を高められるのでしょうか。
1つは、他にはないオリジナルの支援を打ち出すことです。たとえ予算が限られていても、「うちの街ならでは」の取り組みがあれば、話題になりやすく、愛着が生まれることもあるでしょう。
もう1つは、すでに行っている支援の良さや地域の良さを市民にもっと伝えることです。手厚い金銭的支援、遊び場の充実、心理的サポート、自然環境、子育て世帯同士の活発な交流など、魅力の種類はさまざまです。
「隣の芝生の青さ」ではなく、「うちの芝生の良さ」に目を向けられる仕組み――それが、子育て満足度を上げる第一歩なのかもしれません。

5.まとめ
1万人の声から見えてきたのは、「支援の数」や「制度の充実度」だけでは測れない、「その街らしい子育てのしやすさ」でした。
どの街にも、そこに暮らす人の数だけ子育ての形があり、求められる支援や安心のかたちは少しずつ違います。
このリポートに寄せられた一つひとつの声は、子育て世帯が感じている「今」と、これからの「願い」をつなぐ大切な架け橋です。
たくさんの声を寄せてくださったアカチャンホンポ会員の皆さま、ご協力ありがとうございます。
私たちはこれから、今回のリポートから見えてきた気づきや、今回紹介しきれなかった声も携えて新たな取り組みを始め、子どもを産み育てたいという希望を後押しできる社会の実現を目指します。
自治体の皆さまへ:「各自治体の詳細レポート」をご提出します
1万人調査「子育てしやすい街リポート」で寄せられた子育て世帯の声を「詳細レポート」にまとめ、自治体の皆さまにご提供いたします。(下記画像はイメージです。内容は変更になる可能性があります)
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6.子育て支援meetsプロジェクト
子育てする人とサポートをする人をつなぐ、社会課題の解決を目指すプロジェクトです。
届かぬ声と届かぬ支援。そのギャップを埋めるハブとして、私たちは、子育て世帯と自治体の双方の声に耳を傾け、ともに課題解決に取り組んでまいります。

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